<ローラーガールズ・ダイアリー> ドリュー・バリモアが初監督にして、やってくれた! こんなにスカッと心が晴れる作品を見たのは久々だ。とにかくおもしろい、そしてクール! 笑いあり、涙あり、青春あり、そして清々しいラスト。見終わった後まで続く心地よい高揚感。まさに娯楽映画の醍醐味が味わえるが快作だ。
舞台はテキサスの田舎町。17歳のブリスは、母親に言われるままに「美少女コンテスト」に出場しては、そのたびに落選していた。優勝するためには、おしとやかに、女性らしく・・・。しかし、本当の自分は全然ちがう。このままでよいのだろうか。そんなときに出合ったのがローラーゲームだった。
昔ながらの青春モノなのに観せてしまう魅力
ローラーゲームはアメリカ発祥のプロ・スポーツで、ローラースケートを履いた選手で構成されたチームが、攻めと守りに分かれてサーキットコースで得点を競い合う。1960~70年代の初めに流行し、今またアメリカで盛り上がってきているという。
スケートしながら、スクラムを組んで敵を阻んだり、体当たりでコースから押し出したりと、女性が行うスポーツにしてはやや荒々しい。さらに、ここぞというときに繰り出される必殺技、選手の顔にはド派手なビジュアル系のメイク、リング名ならぬ、過激なスケートリンク名はプロレスさながら!
試合を見て強いインスピレーションを感じたブリスは、親に内緒でチームに入団、みるみるうちにその世界で才能を発揮していく。
言ってしまえば、ストーリー自体はスポーツを通して少女の友情と恋愛、そして心の成長を描いた、昔ながらの青春モノだ。しかし、ありがちな起承転結でもまったく観客を飽きさせないのは、4歳から女優として銀幕で経験を積み(一時ドラッグにはまったときもあったけど)、「観客を最後まで楽しませるには、どう見せればよいか」を熟知しているドリューだからこその業なのかもしれない。
痛快!爽快!映画の楽しさがいっぱい
とくに、キャスティングのセンスはピカイチだ。地味でさえない主人公ブリス役には「JUNO/ジュノ」のエレン・ペイジ、挑発的な敵チームのリーダーにはジュリエット・ルイス、やる気のないチームメイトにドリュー・バリモア本人も出演。そのほか有名無名にかかわらず、どの俳優も心憎いほど役にピタッとはまり、生き生きと演じているのが印象的だ。
映画祭で賞をとるような類の大作でもないし、日本での興行規模も決して大きくない(そのせいかはわからないが、公式ホームページがあまりにもお粗末なのがとってもザンネン!)。でも、「映画を観る楽しさ」が、この作品にはいっぱい詰まっている。とくに女性が主人公なので、同性が観るとパワーがもらえることうけあいだ。また、男性でも梅雨のジメジメした気分を一掃させるにはもってこい。
今回は、ドリューの監督デビューの成功と次回作への期待も込めて、☆5つ。
バード
オススメ度:☆☆☆☆☆