朝鮮半島情勢の緊迫化を踏まえて、番組は韓国のユ・ミョンファン外交通商相にインタビューした。北朝鮮が起こしたとされる今回の哨戒艦沈没事件をどう見るか、「制裁外交」をどう進めていくか、という国谷裕子キャスターの質問に、「受け入れ難い、精神的衝撃だった」「国際社会に支持を呼びかける」と常識的かつ慎重な返答をつづける。
金正日登場のころと状況そっくり
北朝鮮の狙いについて、外交通商相は次のように語る。
「北の国内事情がある。デノミ失敗による社会不安が広がっている。軍部の影響力が増しているのも要因の1つと考えられる。一方、韓国内のさまざまな状況に応じて、混乱や分裂を図ろうとしている可能性もある。6月には統一地方選挙があり、11月にはG20がソウルで開催される予定だ。北がそれを見越して今回の事件を画策した可能性もある」
朝鮮問題の専門家の見方も紹介され、ユ氏とほぼ同じだ見方だったが、キム・ジョンイル総書記の三男への後継態勢を確立させるためとする説も有力のようだ。専門家たちはこう解説する。
「今の状況は、キム・ジョンイルが40年前、後継者として登場したころとよく似ている。当時、北朝鮮はアメリカ軍の調査船に攻撃したり、韓国沿岸にゲリラ部隊を次々と送り込むなど、朝鮮半島に緊張状態をつくり出した」
「北朝鮮は国内経済や後継者の問題、韓国の政策の転換もあり、今までとは違う状況に追い込まれている。短期的に見れば、北が攻撃的な行動をとりつづけることは避けられない」
北の選択「国際孤立」か「改革開放」か
韓国のイ・ミョンバク大統領は、北朝鮮が軍事的挑発を繰り返せば、自衛権の発動も辞さないと演説した際に、朝鮮半島が重大な転換点を迎えているとも述べた。この意味合いを問う国谷に対して、ユ外交通商相はこう答える。
「朝鮮半島情勢はきわめて重要な時期にある。北はこのまま孤立する難しい道を歩むのか、国際社会に賛同して国を改革解放して国民が暮らしやすい国にするのか、岐路に立たされている。北朝鮮は今こそ選択しなければいけないという意味だ」
さらに国谷が、「北朝鮮が国際社会の一員になる選択をする方向に向けて、どのように動くのか」と尋ねると、外交通商相は「国際社会が国連を通じて確固たる意思を北朝鮮に伝えることが大切」とした。
「国際社会」のカギを握るのは、北朝鮮に大きな影響力をもつ中国に他ならない。NHKソウル支局長によると、韓国としては国連安保理における中国の存在を意識せざるを得ず、北朝鮮制裁決議を議長声明レベルに下げるなど落とし所を探っているという。
支局長は「韓国にとって今年、最大の目標はG20を無事に開催させること。G20に向けてバランスのとれた対応をいかに進めて行くか。外交手腕が問われている」と結んだ。
半島の平和と安定のために、これ以上の衝突を避けたい韓国と中国が連携して北朝鮮を抑えられるかどうか。そこが試されている局面のように思えた。
*NHKクローズアップ現代(2010年5月27日放送「緊迫の朝鮮半島~韓国・外交トップに聞く~」
アレマ