「美人時計」静止画の魅力。動かして二匹目のどじょう狙ってみなコケる

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   アメリカで「i-pad」が世界にさきがけ発売された時、ニュースでニューヨークかどこかでインタビューされていた50代後半位と思われる白人の男性のコメント。

「茨城県から来た!日本の5月発売が待てなくて、アメリカまで買いにやって来たよ!」

   これを聞いて唖然とした。あ~、よりによってインタビューした白人が、日本から来ていた人だったなんて、スタッフも運がいいというか悪いというか……。そして、いい大人がそこまでして欲しいものなのかとも考えた.

「i-pad」買おうかなあ、どうしようかなあ

   先日、日本でも予約が始まった。そうなるとやっぱり欲しいかも~と、ミーハーゴコロがうずく。仕事に便利なのは間違いない。ん~、欲しい! だが、あくまでも仕事用として。やっぱり小説は本で読んでいたい。

   ページをめくる感覚、小説にリンクしてくるかのような紙の手触りは、どうしても捨てがたい。小説の世界観が自分の中で響いてくるあの喜びは、紙で味わいたいのだ。それに、映画「ネバーエンディングストーリー」のように、小説の世界に入り込んでいく様は、どうしたって本のほうが映像になるというもの。主人公たちと同じ土俵に立っているかのような感覚、想像力と妄想が高まって、小説と現実との区別がつかなくなってくるあの瞬間。文字だけにもかかわらず、想像力でより小説は立体的に、そして読み手それぞれの頭の中で、具現化されていく。印字の雰囲気と匂い、そして紙についている小さなシミだって、小説の世界を味わうには大きな立役者になってくれる。

想像力を摘み取る「説明文化」

   ところで、何でも説明文化になってしまい、想像力をかきたてるようなものが少なくなっている今、ソコはやっぱり、受け手側の想像力を働かせてあげるようにしておけばよかったのにと思うことがある。それは昨年大ヒットした「美人時計」の二番煎じのもののことだ。

   パイオニアでない限り、どうあがいても消費者から飽きられるだろうとわかっていても、この春さまざまなメディアが美人時計のヒットを受け、大勢の美少女を使った番組制作やCM、商品販促などが登場している。そして、二匹目のドジョウを狙う各社は、当然「美少女や美人が動いて、さまざまな表情を見せるほうがいいに決まっているじゃないか!」と考え、静止画だった美少女たちを動画にした。が、しかしそうだろうか。

   なぜ、美人時計が人気を得たのか。それは静止画だからである。スティールカメラマンが切り取った奇跡の一枚だからこそいいのだ。動画となると、喋り方の独特な癖や声、姿勢が悪いなど、動きが生じて美しくないカットが増える。ある番組で、美少女達の選別に立ち会ったが、宣伝用の写真では可愛いので合格となった女の子でも、動画となるとガッカリというケースが何度かあった。このようにスティールでは奇跡の一枚は撮影できても、奇跡の動画は難しいのだ。そして、奇跡の一枚だからこそ、見ている側は「この子、可愛いな~。どんな性格なんだろう?」「どんな生活しているんだろう?」と、いろいろと想像という名の妄想を膨らませ、より一層コンテンツに興味を持ってもらえる仕組みだったのだ。

   想像の世界に浸っている時間は、自分だけが知る楽しみと征服感がある。その感覚を楽しめたのは、相手が喋らずじっと動かないものだったからではないか?

   この感覚を集約したひと言がある。映画「空気人形」の中で、人間になってしまったダッチワイフの主人公に持ち主が言う台詞だ。

「なんで人間になってしもたん?人形に戻ってくれないかな。」

時に暴走することもある想像力。そうすると……、ビジネスで考えた場合、商品や番組に対して、万人の感想が同じようになるために今の説明文化があるのかもしれない、とも思う。

モジョっこ

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