ナイナイ岡村ぶん殴る松雪の演技に迫力!サンゴ礁再生にかけた一家の悪戦苦闘

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(C)2010『てぃだかんかん』製作委員会
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<てぃだかんかん~海とサンゴと小さな奇跡> 1990年代後半、沖縄のサンゴ礁は30年前と比べて90%死滅という危機的状況に瀕していた。本作品は、自分の子ども時代から様変わりしてしまった海に、「もう一度サンゴ礁を蘇らせたい」という一心で、10年かけて世界初の養殖サンゴの海への移植・産卵を成功させた夫婦の実話をもとにしている。

   監督は「デトロイト・メタル・シティ」の李闘士男、不器用で朴訥とした夫・金城健司役をナインティナインの岡村隆史、いつも大らかな心で夫を支え続けた妻・由莉役を松雪泰子が演じている。

娯楽作品だけどテーマは重い

   実はこの映画、見に行くまで「よくある大衆向けの娯楽映画だろう」とあまり期待していなかった。しかし、始まってみると台詞はほぼ沖縄弁、キャラクターも個性豊かで、意外にも引き込まれていくではないか。なかでも、『普段はおっとりしてるけど、実は芯の強い妻』を演じた松雪泰子は良かった。とくに終盤、多額の借金を背負い、くじけそうになる夫(岡村)を、殴りつけて叱咤激励する松雪のあの迫真の演技! スクリーンにくぎづけになってしまった。

   そもそもサンゴが死んでしまったのは、埋め立てや温暖化が原因だ。それによって人間は便利な生活と豊かな経済を得てきただけに、単に「サンゴの再生」というとエコロジーで響きはいいが、一方でそれは沖縄の産業や開発にたてつくことに繋がる。

   本作品の中でも、地元の漁協の猛反対を受けたり、研究者たちから非難されたり、詐欺にあって借金を背負ったりと主人公一家の苦労の連続が描かれているが、実際はもっと壮絶な10年だったことだろう。そう思うと、先述の松雪の演技は例外として、全体的には登場人物たちの心情の描かれ方が浅いし、芸人出身の岡村をはじめ、俳優陣たちのユーモアたっぷりの演技が、かえって事実の重みを伝えるにはコミカルすぎる。

   しかし、重いテーマを、誰にでもわかりやすい娯楽作品に仕立て上げたところに、今回の作品の意味があるようにもとれた。この映画は一人でも、家族でも、それこそ初デートで見てもまず失敗はない。さらに、サンゴ礁の危機迫る現状や、希望を諦めない人間の強さみたいなものも、少なくとも私の心には伝わってきたので、今回のオススメ度は星3つとしたい。

   最後に、欲を言えば、移植したサンゴが産卵にいきつくまでの成長過程をもっと見せてほしかった。人間ドラマも重要だが、サンゴあっての物語なのだから、そういうシーンがもっとあってもよかった。本編に入らなければ、せめてエンドロールにでも入れてほしかったなぁ。

バード

   オススメ度:☆☆☆

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