「アスペルガー症候群」もっと活躍の場を作れないか

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社会進出

   ここで、森本キャスターの第1の疑問。

「性格的に人付き合いが苦手な人とどう違うのか。具体的にどんな障害なのですか?」

   番組に出演した脳の機能とコミュニケーションが専門の京都大霊長類研究所の正高信男教授は次のように説明する。

「言葉の意味を字義通りにしか受け止められない。単語が配列された文章になってくると、たとえば皮肉が全然理解できない。こだわりが強いために時間を非常に順守する。日課がきちっと決まっていて、1分でもずれるとカッとなったりする。ただ、障害と性格的な間に決定的な基準があるわけではなく、多面的、総合的に判断される」

   この障害がマイナスばかりではないことは触れたが、アンシュタインの例でみても、集中力が高くすぐれた能力を持った人が多いことは確かだ。

   番組では、その能力をすでに企業で発揮し、業績に貢献している人のケースを取り上げた。都内のIT企業人事部。1年半前にアスペルガー症候群の37歳の男性を採用した。採用の決め手は優れた文章力。就活中の学生向けに会社紹介のブログ作成をまかされているが、すぐに役立つと就職サイトで評判となり、アクセス数はナンバー1という。

   数学や論理思考の優れた人もいる。大学で助手をしていたが対人関係がうまくいかず、うつ病になって退職した男性は、苦手な法律の条文を数式に置き換え、わずか1週間の勉強で難関の不動産取引の国家試験をパス。現在、知人の不動産会社で不動産運用に関する分析の仕事に従事している。

   正高教授も「障害というと負の側面が注目されるが、同時に障害を持ったがゆえの力、強みを発揮する。それに着目した非常に積極的な試み。日本では稀有な例だと思います」と評価する。さらに、「日本の根強い横並び意識が今の閉塞状況を生んでいる。苦手の部分には目をつむり、出る杭を打つのでなく伸ばすことが大事です」と締めくくった。

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2010年4月21日放送)
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