「鳩山政権って、どうなっているのか」――そう思った有権者が多いのではないだろうか。政治アナリストの伊藤惇夫は「調整機能がどこにも働いていない。みんながそれぞれバラバラの方向に動いているから迷走状態になってしまう」と指摘する。
八方美人
前原国土交通相が発表した高速道路の新料金体系については、閣内、民主党内から「マニフェストで無料化を掲げていたのに場所によっては値上げになる。そんなことは認められない」と反発の声が上がった。これに対して、鳩山首相は国交相の方針支持を明らかにしたが、小沢幹事長が「国民にウソをつくことになる」と見直しを求めると、あっさりと「見直し」を表明した。「暫定税率廃止」騒動の際も、こんな図式を見たような気がする。
おさまらないのは前原国交相だ。もともとは「道路をつくる」という党側の要望を受け、財源を生み出すために「実質的値上げ」に踏み切ったのである。冗談ではないという話だ。官邸に乗り込んで直談判に及ぶ。すると首相は、今度は「現時点では」との条件つきで「見直し撤回」に切り換える。右往左往、二転三転の印象だが、さらに国会の審議次第では再度の「見直し」もあり得るということらしい。これで国交相、幹事長両方の顔を立てたつもりなのだろう。「八方美人ここに極まる」という感じだ。
小倉智昭が「政権運営、大丈夫ですか。普天間のこともあるし」と伊藤に尋ねる。 「永田町では5月政局という言葉が急激に聞かれるようになった。もしかしたら5月末の段階で、鳩山さんの立場が変わるのではないかという見方が出ているのは事実」と伊藤。 政権交代から8か月。こんなはずではなかったのだが……。