<ソラニン>大学時代に軽音サークルだった男女5人のその後を描く青春物語。原作は、20代、30代の若者に熱狂的な支持を受けている浅野いにおの漫画だ。
物語の前半は、社会人2年目で自由を求めて会社を辞めた芽衣子(宮﨑<崎>あおい)とフリーターをしながらバンドを続ける種田(高良健吾)の同棲生活を中心に、残りのメンバーのそれぞれの生き方が淡々と描かれる。
ライブシーンは必見
持ち続けていたい夢、でもそれだけでは食べていけない現実。登場人物たちが抱える苦悩や葛藤は、学生と社会人の狭間で誰もが1度は経験することであり、その時代を過ぎた人も、今まさにその時代を過ごしている人も大いに共感することだろう。
決してテンポがよいとはいえない前半の展開は、見る人によっては少しイライラするかもしれない。しかし、とりとめのない日々の中でこそ、知らず知らずのうちに何かが終わり、また新しい何かが始まっていくもの。そんなリアリティーを追求しているのが浅野いにおワールドの持ち味でもあるので、良くも悪くも原作に忠実といえるだろう。
見どころは、物語後半からだ。種田がバイクで突然の事故にあう。芽衣子は種田が最後に作った新曲「ソラニン」を歌うために、ギターを練習し始める。最初は乗り気じゃなかったメンバーも、次第に芽衣子の熱意に背中を押されるように楽器を手に取り始める。そしてついに彼らは、種田不在のまま大学卒業後初のライブに出ることに……。
濃い内容がギュッと凝縮された後半の展開には、一気に引き込まれた。ゆるゆるとした前半部分は、浅野いにおワールドの再現であり、この後半部分のための長い助走だったのかも!? うーん、上手い!
過去作品と同じく今回も、宮崎あおいのキュートさは絶好調。しかしもっとも目を見張ったのは、役者たちがギターを奏で、首筋の血管が切れんばかりの大声を張り上げて熱唱するシーンだった。それは演技の枠を超え、まさにガチの「演奏」。バンドやらロックやらに大して興味がなかった私も、気づいたら足でリズムをとりながら、拳を握りしめ、最後には「一緒に歌いたい!」とさえ思ったほどだ。
ラストの芽衣子の歌声と、ビリー(桐谷健太)のドラム、加藤(サンボマスターの近藤洋一)のベースには本当にシビレた!!
芽衣子や友人らの喪失感をもう少し深く掘り下げて描いてほしかったという物足りなさは残るが、さわやかな余韻にひたることができるラストのライブシーンは必見♪ という意味を込めて、星は4つ!
バード
オススメ度:☆☆☆☆