容疑者の家族追い詰める 日本社会「平成の5人組」意識

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報道陣が自宅に

   番組ではその1例として、社会を揺るがすような事件でなくとも犯罪家族が追い詰められるケースを取り上げた。

   知人とのトラブルで相手を殺害し、服役中の夫を持つ妻によると、一人息子と3人暮らしだった夫は穏やかな性格で、殺人を犯すなど想像すらしなかったという。

   「そこへある日警察から電話があり、『あと、3時間で逮捕状が出る。報道されると思うから自宅周囲は人でいっぱいになる。子どもがかわいそうなので、家を離れて下さい』といわれた。慌てて子どもを知人に預け、自分は勤め先に身を隠した」という。

   案の定このあと、テレビの報道番組でよく見かけるシーンがそのまま再現されたようだ。

   『近所の人の話』を取るために自宅周辺の取材が展開され、『写真が欲しい』と近所の子どもにまで取材の矛先が……

   この時から自宅周辺の人たちの冷たい視線を感じるようになったが、見知らぬ人たちからの嫌がらせも始まり、赤い字で『殺人者の家』と落書きされた。

   加えて、小学校2年生の息子は事件発生いらい休学させていたが、学校から遠回しに転校を促されたという。

   妻が転校の手続きのため学校に電話連絡した際、学校が大好きだった息子のある願いを学校に伝えた。「皆にさよならを言いたいので1度登校させて欲しい」と。

   しかし,学校からは「フォローする自信がないので遠慮してほしい」と断られた。「子どもは何も言わず泣いていた」という。

   その息子が転校直前のある日の深夜、学校に行きたいと言い出した。連れて行くと、息子は1人で校庭を30分ほど走り回ったすえ、「もう大丈夫。皆にお別れをしたから……」と言ったという。

   涙が出てくる話だが、妻はさらにもう1度転校をさせたという。事件を知る人たちから息子を少しでも遠ざけるために……。

   キャスターの国谷裕子が「なぜ犯罪を犯したわけでもない家族にまで批判の矛先が向けられるのでしょうかね」と。

   長年、被害者の家族支援を行ってきた常磐大の諸澤英道教授は次のように言う。

「日本に限らずアジアの近隣国も似たようなもので、犯罪は家族や組織、地域が生みだすという考えが強い。政府はそれを家族や地域職場が犯罪を出さないように利用してきた面がある。それをしっかり根付かせてしまった」

   政府が利用したというより、犯罪の防止、告発、連帯責任を負担させるためにお上が作った組織がむしろ根底にあるのではなかろうか。

   律令制の五保を模したといわれる江戸時代の5人組、太平洋戦争中に設けられた隣組。制度はなくなったが、意識だけは定着し残っているのでは……

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2010年4月7日放送)
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