<テレビウォッチ>国内には将来的に暗い材料ばかりのなか、日本企業はグローバル、とりわけアジアの新興市場に活路を見いだそうとしている。その際には、それらの国の人たち、たとえば留学生などは力強い人材になるはずだ。ところが、今回の放送「アジアの『人材』を呼び込め」によると、日本は現状アジアの人材を呼び込めておらず、韓国などとの競争において、またまたまたしても後塵を排してるのだという。
日本語の壁
大問題のひとつは「日本語」。多くの企業が外国人留学生に対しても「日本人と同等の日本語能力」を求めている。中国から来た超優秀な留学生、潘維中は「日本語能力だけで評価されたくないですね。日本人とくらべれば英語も話せるし、日本人学生と違う点を見てもらいたい」と話す。
スタジオゲストの藤村博之・法政大学大学院教授は「日本人と同等の日本語能力が必要なのかどうか、職種によっても違うはずで、その切り分けができてない」と指摘。幸運にも入社の運びとなっても、待遇や人事評価に納得できず、辞めてしまう人が少なくないそうだ。むやみやたらと同化、同質化を強要し、外国人を評価できないニッポン企業は、不見識でヘンだということであろう。
一方、お隣の韓国では、イ・ミョンバク大統領の音頭取りのもと、国と大学、企業が一体となって、グローバルな人材の確保と活用に取り組んでいるそうな。IT企業のSK C&Cでは多くの外国人を雇用、業績を伸ばしてる。「より多くの優秀なグローバル人材を迎い入れ、会社のトップにもなれる人事制度をつくることを目指す」(副社長)。
東大でも…
人材の確保は、青田買い争奪戦の様相をも見せているという。トコロはベトナム・ハノイ。韓国科学技術院(KAIST)の入試担当者が、高校で説明会を開いていた。留学生全員に奨学金が出るので、学費はゼロ。「KAISTを出れば、韓国の一流企業に就職できます」と力強く訴える。生徒たちは「KAISTなら夢がかないそう」などと笑顔を見せるのだった。
同じころ、日本の一流大学の東大も、PRのためにハノイの高校を訪れた。しかし、高校側からは「生徒たちは日本のほかにも、韓国やシンガポール、そしてシンガポールの大学に行きたがってます」と、つれない評価。東大教授は「待ったなしの競争に突入した。ここに割り込むのは相当大変だ」と苦笑い。
日本一の東大ブランドも、アジアに出ればただのノーブランド。アジアの優秀な人材確保のためには、まずは日本に来ることの魅力やメリットを創出することが先決のようである。
ボンド柳生
*NHKクローズアップ現代(2010年4月6日放送)