<テレビウォッチ>国松孝次元警察庁長官狙撃事件が3月30日零時に公訴時効を迎えた。
「自己満足」
これを受けて警視庁の青木五郎公安部長が3月30日、「事件はオウム真理教によるテロ」と断定する前代未聞の記者会見を行った。
警視庁はこの日、「容疑者不詳」として同事件の書類を東京地検に送致したが、それにも拘らず何故「オウムによるテロ」と断定し、公表したのか。番組はこの疑問を取り上げた。
会見でまず『捜査結果概要』が報道陣に配布され、青木部長が末尾に書かれた『結論』を読み上げた。
「本事件は、教祖(松本智津夫死刑囚)の意思の下、教団信者グループにより敢行された計画的、組織的なテロであった……」
「オウムによるテロ」と断定し、公表した理由について青木部長は次のように述べている。
「オウム真理教の行った犯罪を風化させることなく、ともに行動して頂く契機とする必要があると考えたから」
これに土本武司元最高検検事が「起訴できないことが百も分かっていながら、会見し公表するということは自己満足」と手厳しい批判を。
反省点がない
フジテレビ解説委員の箕輪幸人も小倉の「オウムと断定したことの是非をどう思いますか?」に次のように答えた。
「これだけ税金を使って長時間捜査したのだから、捜査結果をある程度説明する必要がある。しかし、断定する以上、証拠を集め起訴すべきだ。起訴できない以上、捜査の経過がいかに立派でも合格点はあげられない」
さらに箕輪は「警察としては犯人像が見えていたことを示したかったのだろう。教団の危険性について警鐘を鳴らす意味もあったのだろう。しかし、捜査の障害になったことが必ずあるし、反省すべき点だってあるはず。それが(概要書には)一切ない」と。
あれやこれや意見はあるが、警視庁が批判を覚悟で敢えてオウムの犯行を断定し、公表したのか本音のところは分からない。
まさか? とは思いつつ3月29日に放送されたNHKクローズアップ現代を思い出した。
『捜査迷走の15年・警察で何が』のタイトルの中身は、地下鉄サリン事件で人手を取られた刑事部に代わって、この種の事件に不慣れな公安部が担当した。案の定、聞き込み捜査が後手に回るなど初動捜査のミスが、あと後まで響いたというものだった。
今回の公表は、その釈明の意図も含まれていたのでは??