ミュージカルの2回目は、『紳士は金髪がお好き』(ハワード・ホークス監督 1953年)
マリリン・モンローのセクシーな可愛らしさが全開するミュージカル・コメディの大傑作!
お話は、女がいかに男をゲットするかという、全盛期のハリウッドお得意の「マン・ハント」ものだが、なにより素敵なのは、ブロンドのモンローに対して、黒髪のグラマー、ジェーン・ラッセルを配したことだ。
髪の色も対照的なら、小柄でいかにも柔らかそうな体つきのモンローに対して、大柄で胸もお尻もボリューム満点ながら、男っぽい感じのラッセル、さらにモンローの舌足らずの甘い声に対して、ラッセルのハスキーな声というように、すべてが対照的な2人が歌い踊るのだから、それだけで画面が弾ける。
2人は、ニューヨークのナイトクラブで歌い踊る芸人同士で大の仲良し。「相手の紳士が、チビでもノッポでも、若かろうと年寄りだろうと、やっぱり百万長者に限るわよ」と歌うモンローが、その言葉通り、金持ちの息子のハートを射止め、パリで結婚式を挙げることになるのだが、出発間際に、カレが父親の病気で行けなくなり、イケイケどんどんのモンローを庇う姉さん株のラッセルと2人で豪華客船に乗り込む、というのが物語の発端。
船中では、相変わらず、モンローは金持ちをゲットしようと動き回る一方、カレの父親が送りこんだ探偵が、それと知らぬラッセルといい仲になるかと思えば、身元がバレて彼女たちにしっぺ返しを喰らうなど、まさに爆笑モノのてんやわんやが繰りひろげられる。
さらに、2人が行き着いたパリでの裁判沙汰にも、ホークス一流のギャグが目一杯盛り込まれた挙げ句、最後はハッピーエンドとなるのだが、モンローが、元の鞘に収まる前に、金持ちをゲットしようとすることを非難するカレの父親に対し、言い返すセリフがいい。すなわち、男がブロンドの美人を求めるように、女が金持ちの男を求めてどこが悪いの? と。
映画評論家 上野昂志