<テレビウォッチ>サラ金や消費者金融から借金した人が法外な利息に苦しむ様は容易に想像がつく。ことし(2010年)6月には、法律で認められる利息の上限が年率15-20%に抑えられる。また4年前には、最高裁がこれ以上の利息を認めないとする判断を示した。
「無資格で報酬」組も
この判決以来、過去にそれを超える利率で利息を払った人が、払いすぎた利息の返還を求め始めた。「2008年度だけで返された額は1兆円に上り、多くの多重債務者が救済されている」(国谷裕子キャスター)。一方では、この過払い金を狙う悪い奴らがいるのだ。
前半は実例報告。登場人物は消費者金融の元社員の男。男は、多重債務に陥った年金生活の夫婦を訪れる。夫婦は経営していた会社が倒産し、男が以前、勤めていた会社からも借金があった。過払い金を取り戻さないか、という男の誘いに応じる。代行手続きは弁護士がやるとの触れ込みだが、実際はすべて男が進める。結果的には120万円を回収した。しかし、当初、無報酬だと言っていた男が態度を変えて半額を要求、夫婦は60万円を渡す。残された領収書に男の署名はなかった。
スタジオゲストの宇都宮健児弁護士(日弁連多重債務対策本部本部長代行)によれば、この男の行為は「弁護士法72条違反。2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」を科される犯罪。弁護士、司法書士以外の民間人が債務整理事件を扱って報酬を得ることは違法なのだという。
更正よりカネもうけ
ところが、弁護士、司法書士にも悪辣な者がいるのである。手口は「戸別訪問」ではない。チラシや広告で集客し、人件費の安い多くの事務員を使って多数の顧客を相手にする。かつて、そんな事務所にいたという弁護士は「過払い金は経済的な面で効率よく魅力ある。どの事務所も業務のメインにもって行く。ベルトコンベアが回るたびにお金が入ってくる」と明かす。100万円の回収金を上回る130万円余の高額報酬を請求してトラブル化しているケースが紹介される。
こうした事態について、日弁連会長に選ばれたばかりの宇都宮は「弁護士としては、多重債務者の生活再建、経済的更生が当然の目的だと思ってきた。もっぱら自分の利益を追求してビジネスとする弁護士が出てきていることは全く嘆かわしい」と述べる。
最後は日弁連会長が語る対策――2000年に広告規制を撤廃、04年に弁護士の報酬規定を撤廃して自由化したが、両方とも規制する方向で検討したい。弁護士会が09年に出した債務整理事件の指針(ガイドライン)を改善する必要がある。消費者教育を徹底し、高校生あたりから多重債務問題を教育の中にとり入れられればと思う。どこの弁護士会にも多重債務相談の窓口がある。その広報も、きちっとやりたい――
宇都宮によると、全国には200-300万人の多重債務者が存在し、2割くらいは弁護士会や消費者センターなどの適切な相談窓口に行くが、8割は適切な所を知らないそうだ。うまい話と広告にはご用心である。
アレマ
* NHKクローズアップ現代(2010年3月11日放送)