楽しい食事の記憶
こうした「高齢者の食」を支える取り組みに関して日本は先進国らしい。食べる力の検査、回復、衰えの予防など、最前線の現場が紹介される。中で、年配の男女が並んで「タ、タ、タ、タ、タ」と繰り返し発声する場面が出てくる。山田は「舌を前に突き出す動作の訓練」だ説明し、飲み込むには舌が重要な働きをすると述べる。
介護食の面でも「日本は世界から高い評価を得ている」と国谷裕子キャスターは話す。先ごろ東京で行われた「介護食展」でも各国の参加者から、好評の声を寄せられたようだ。また、日本の食品メーカーの担当者が中国・上海の富裕層向け介護施設を訪れ、持ちこんだトリ肉の旨煮を入居者に試食させると、「軟らかい」「おいしい」「味も香りもいい」と大いに喜ばれる。中国には、日本の介護食にあたるものがないのだそうだ。食品メーカーの役員は「中国でも高齢化が進む。私どもが培ってきたノウハウが中国でも活用される。大きなビジネスチャンスと考えていい」と自信をみせる。今年中には輸出を始めるという。
最後に「高齢者がいくつになっても、よりよく食べるには何が大事ですか」と尋ねた国谷に、山田は「寝たきりの高齢者がお寿司を見ると目を輝かせて食欲をみせる。食べたいものがなくなることが不幸だ。子どものころから、家族みんなでおいしく食べた、楽しく食べたという記憶をたくさんつくっていただければ、高齢の方にとって介護の現場で役に立つと思う」と答えた。
医療チームの世話になるにしろ、介護施設に入ってうまい介護食を食べるにせよ、やはり先立つものが必要だと、ひとしお感じさせられた。
アレマ
*NHKクローズアップ現代(2010年3月4日放送)