<木下部長とボク>広告代理店の木下部長(板尾創路)の信じがたい会社生活。型破りなサラリーマンというのは、多くの平凡なサラリーマンの憧れだろう。
すっとぼけた面白さ
だけど同じ型破りといっても、「サラリーマン金太郎」(テレビ朝日系)が王道を行く熱血型だとしたら、木下部長はその対極だ。思いっきり脱力系のゆーるゆる型。曜日と時間帯のせいもあるのか、視聴率ではかなり負けているが、私はこっちの方が好きだ。
脚本が大宮エリーだからなあ、面白いワケよ。と思ったが、そのシュールな面白さは板尾創路の力に負うところも大きいね。板尾創路はヘンなヤツだ。もちろん二枚目ではない。かといって不細工すぎるわけでもない。無表情で、たまに笑っても得体の知れない感じがして不気味なだけ。
その彼が今、ブレークしているようだ。監督・脚本・主演の映画「板尾創路の脱獄王」も見に行ってしまった。何とも言いがたいすっとぼけた面白さ。肌合いは違うが、一時のビートたけしや明石家さんまに通じる「面白がってもらうためなら死んでもいい」という芸人の迫力を感じる。私としてはお勧めです。
で、「木下部長」だが、数人しかいない部下の名前も覚えられず、「会社で寝ている夢を見ながら」会社で寝ている日常。あげく、部下に「もう、帰ってええかな?」が口ぐせ。新入社員のボク・僕元公司(しずる・池田一真)もあきれかえるばかり。部長なのに、部のことはおろか会社のこともまったく考えない自由人。うらやむのはネコだけ。安アパートの万年床にひっくり返って、ニャアと鳴いてみたり。
ゆるーいおとぎ話
それに対し、同期の君島部長(宅麻伸)は部下100人を擁する超エリートで、絵に描いたような優等生サラリーマン。でも、一生懸命に真っ当な仕事をしているのに、なぜかうまくいかない。いいかげんな木下部長が、ケガの功名でうまくいってしまうのだ。だけど、お互いにまったくライバル視してないので、けっこう仲良しなところがいい。ほのぼの。
いいのがもうひとり、木下部唯一のやり手社員・石川(津田寛治)。いつも眉を八の字に寄せ、情けない木下部長に代わってしっかり仕事をし、出世しようと頑張る。が、これもまたうまくいかず、結局、木下部長が、本人にとっては自然体の「奇策」で乗り切ってしまう。という、まあ、おとぎ話ですが、べつに教訓はないので、ゆるーく楽しめます。<テレビウォッチ>
カモノ・ハシ