オデッサの階段
これは、ロシア革命に先駆するポチョムキン号の叛乱を描いているので、革命を鼓舞する映画と思われているが、そんな意味づけは無用。アクション映画として、素晴らしいのだ。サイレントではあるが、艦内の機械や水兵たちの動きから、そこに響いているはずの物音が聞こえてくる。ここで、とくに注視してもらいたいのは、グラフィックな画面構成だ。そして、銃殺を目前にした水兵たちがついに立ち上がり、叛乱に至るアクション。
だが、極めつきは、死んだ水兵を悼む群衆がオデッサの階段を登っていくと、突如、現れたコサック兵が、群衆に向けて無差別な銃撃を開始する場面だ。背中を撃たれた母親の手を離れた乳母車が、赤ん坊を乗せたまま階段を転がり落ちていく。はじめは緩やかな動きが急テンポに変わっていく、その呼吸。
これは、オデッサの階段シーンとして、その後の映画に何度も引用されている。また、これを見たハリウッドのプロデューサーは、この監督を、アメリカに連れてこいといったという。
映画評論家 上野昂志