キャスティングは成功
まず、キャスティングが見事だ。最近はバラエティ番組等でもネタにされることの堺雅人の常に半笑いの表情も、首相暗殺犯人に仕立て上げられるというストーリーに信憑性が増すほど怪しげに映る。
また、『アヒルと鴨のコインロッカー』、『フィッシュストーリー』から続いて出演している濱田岳も良かった。キルオ、という通り魔殺人犯という難しい役どころだったが、鼻にかけたねっとりとした声色で演じ、子供らしさと、凶悪殺人というミスマッチが独特の不気味さを醸し出していた。それだけにキルオという人物の役割が映画全体を通して効いてこなかったのが残念だ。
キャスティングを含めストーリーやセリフに至るまで原作の世界観を忠実に再現している。そこは伊坂原作の映画を過去にも作ってきたチームだけあって、原作ファンには満足できる映画になっているのではないか。
しかし、小説から離れて1本の映画として考えたとき、どこか物足りなさを感じてしまう。あまりにも原作の要素を詰め込み過ぎて、1000枚ほどの原稿用紙の小説の内容をそのままコンパクトにしたという印象を受けてしまった。プロット作りの段階から、もう少し原作と切り離して映画ならではの要素を付け足して欲しかった。
野崎芳史
オススメ度:☆☆☆