見たあと暗い気持ちにならない
これは殺されてしまったスージーと、残された家族が互いを失ったことにより、そこから気持ちを蘇生していくという、言わば再生をテーマとした、とても前向きとも取れる映画である。なので14歳の少女が殺されてしまう話でも、見たあとに暗い気持ちにならない。それはもともと原作が持つテーマ性のおかげかも知れないが、ビジュアル効果によるものも大きい。
スージーが辿り着く異世界が、ピーター・ジャクソンの手によって非常に幻想的な世界になっており、この映画のファンタジー色を強めている。ただしその映像が独創的なあまり、抽象的な動く絵画のように見えてしまう。とくに現世での暗い描写のあとに場面替わりすると、あまりのギャップに違和感をもつかもしれない。
ラストの描写についてもいろいろと賛否両論あるようだが、この映画で1番素晴らしいのは誰が何と言おうと、犯人に扮したスタンリー・トゥッチである。眼鏡ハゲのロリコン変態野郎で、リアルにそのへんにいそうなもんだから、余計に気持ち悪い。でもスゴい。動作から息遣いまで徹底して変態になりきっている。映画の中で変態が1番スゴいというのもおかしな話ではあるが、何とこの役でオスカーにノミネート! ただ本人どんな気持ちなんだろう……。
巴麻衣
オススメ度:☆☆☆