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<インビクタス/負けざる者たち>黒人であり、また元囚人でありながら、南アフリカ共和国の大統領となった実在の人物、ネルソン・マンデラ。彼は反アパルトヘイトの精神を唱え、南アフリカという国を変えるために、同国のラグビーチームの主将・ピナールに1本の電話を入れた。
赦すことから
それは間近に迫ったワールドカップ・南アフリカ大会での優勝を願うものだった。彼はラグビーというスポーツを通じて、人種の枠を取り払おうというのだ。主演のマンデラ大統領を演じるのは、オスカー俳優モーガン・フリーマン。ジョン・カーリン原作のノンフィクション小説を「グラン・トリノ」のクリント・イーストウッド監督が映画化。
マンデラ大統領にはある考えがあった。白人がほとんどのラグビーチームに、黒人の子供たちにラグビーを教えるよう促す。自分が黒人だからといって、黒人ばかりひいきしない。マンデラ大統領はわかっていた。黒人も白人も、どちらかをひいきする事によって、憎まれ役をつくっては、何も問題は解決しないことを。互いが共存するために必要なのは、南アフリカが国を挙げて誇れるものをつくることだと。
劇中のマンデラ大統領はとても穏やで感じの良い人だ。海のような広い心と、長い投獄生活で得た「自分の魂は自分のもの」という、誰よりも強い信念をもったその姿に、心からエールを送りたかった。その一方で、自分たちを長く差別してきた白人たちを「赦す」ことから始める事が、国をひとつにするという考えにも、胸を打たれた。
イーストウッドの力量は?
また、ラグビーチームの主将・ピナール役を演じたマット・デイモンはラグビー選手を演ずるにあたり、肉体改造を行ったという。よって今までよりもマッチョで魅力的なマット・デイモンを見たい人にも、本作は必見だ。ラグビーの試合シーンは、劇場に響き渡る大観衆の声援と、選手をあらゆる角度から鮮明にとらえた迫力ある映像が見事だ。ある種スポーツ観戦のような興奮と緊張感が、スクリーンから伝わってくる。
クリント・イーストウッドは期待を裏切らない。これだけ多くの作品をヒットさせたのだ、映画館に足を運ぶ観客の目も自然に厳しくなるかもしれない。しかし、ご心配なく。その答えは映画館で確かめて欲しい。
けれど強いて言うなら、これがクリント・イーストウッドの完全オリジナルの脚本であったら、また違うクライマックスがあったのでは? とも思ってしまう。どうやら私も、クリント・イーストウッドが偉大な監督であるが故に、少し厳しい目で見てしまうのかもしれない。
PEKO
オススメ度:☆☆☆