<テレビウォッチ>間もなくはじまるバンクーバー冬季オリンピックの影響で、約1か月放送お休みになるクローズアップ現代。休止前最後の放送が、この「どうなる郵政『見直し』のゆくえ」であった。
郵政選挙と民主政権誕生
政権変われば、やり方変わる。米軍基地問題、ダム建設などと並んで、それまでの基本方針が一転してしまったモノのひとつが「郵政民営化」だろう。
思い起こせばまだ数年単位の昔――。民間の民間によるマネーのための自由な経済活動がなによりなんだ理論では、日本は官がデカすぎ、社会主義的になりすぎ、民間が圧迫されて、停滞していた。「郵政」といえばその象徴であった。郵政民営化、郵政解体を掲げた小泉自民党は選挙で大勝。そのときに、民営化反対で党を追い出された亀井静香は冷や飯を食わされながら、「小泉が、ユーセイが……」とブツブツ唱えるばかり。
ところが、そんな亀井が「郵政相」として奇跡のカムバック。「郵便局(長)は国民の財産」だとして、あれやこれや、奇想天外な郵便局の積極活用案を打ち出せば、本日スタジオゲストの大塚耕平・内閣府副大臣は「日本郵政グループは現にある巨大な社会インフラ」と話す。大塚の物言いは全般に亀井よりよほど慎重だが、郵政についての基本コンセプトではそう違わなそうな感じではある。
「ユーザーのためになる経営」
「(郵政拡大方向の見直しは)民業圧迫になるのでは?」と、みなさまの受信料でつくった番組を利用して、オンデマンドやらソフト事業やらを展開し、民間から批判を浴びるNHKの森本健成キャスターが聞く。
大塚は滔々と答えた。「民業であれ、官業であれ、ユーザーのみなさんのためになる経営であり、業務であるかという原点を(民間も)一緒になって考えていただきたい。民間のみなさんの迷惑にならないように、国民・ユーザーの役に立つ立場を探りたい。これがわたしたちの立場です」
これは、そのままNHKの社是にも流用できそうだ。それはそうと、昔はあれほど勢いのあった「官業による民業の圧迫」という正義の印籠のようなフレーズも、いまではボソボソとした呟きのように聞こえてならない。これがまた5年後あたりにどうなってるかは、空恐ろしくも、ちょっとはおもしろいミステリーであろう。
ボンド柳生
*NHKクローズアップ現代(2010年2月9日放送)