「本当に君に逢いたい」
サロゲートは肉体すら相手に知られない匿名社会の頂点でもあり、ブルースの家庭でも「仮面夫婦」ならぬ「サロゲート夫婦」になりつつあった。妻は自動車事故で息子を亡くしてからは部屋に閉じこもって、サロゲートでしか夫に会わない。ブルースは妻に「本当の君に逢いたい」と嘆くがどうしても想いが通じない。
サロゲートは夫婦の生身の付き合いすらも奪ってしまうのだ。この映画は「面と向かって話そうよ」という態度がいまのテクノロジーの発達で、徐々になくなりつつあるということを象徴している。
キャスティングが面白く、ほとんどのサロゲートが理想的な長身かつ小顔で、ルックスも完璧に近いモデル級の役者ばかり(サロゲートは生身の人間が演じている)。登場するのはそんな美女と美男ばかりだが、サロゲートを操る実在の「そいつ」がそんなに「カッコよくもない」ことがわかるというユーモアがある。まるで初めて会った文通相手の素顔にショックを受ける、そんなハラハラ感が醍醐味だ。
ユウ・ミサト
オススメ度:☆☆☆