挑み続ける老名優 若い頃言われた「ひどい言葉」

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   <テレビウォッチ>NHKのBSハイビジョン特集で、老優大滝秀治84歳に焦点をあてていた。新作舞台の主役となった大滝の苦労を丹念に追ったドキュメンタリーだ。

遅咲きの人

   大滝が挑戦するのは、別所実が古典落語をもとに書き下ろした「らくだ」という不条理劇なのだが、大滝にとって不条理劇は初挑戦なのだという。これまでリアリティを追求してきた人なのだ。慣れない展開で台詞が頭に入ってこない、とイラつく大滝。場面展開も唐突で、えらい目にあったようだ。これほどの名優でも「ついていけない」と悩んでいた。

   昔話も紹介される。若いころ劇団民芸に入った大滝は、大物の宇野重吉から「役者を辞めろ」と言われた。声が「壊れたハーモニカだ」と酷評された。それで30歳ぐらいまで照明などの裏方をやっていた。たまたま役者に穴が空き、舞台にあがることになったが、緊張して台詞をいうことができなかった。役者として認められたのは、45歳のころ「審判」という法廷劇でのことだった。遅咲きの人だったのだ。

   「らくだ」に戻ると、大滝は演出家らとぶつかりながらも着実に役をものにしていく。84歳で名優といわれる人が、さらに変化を求めて悩みながら挑戦する姿は実に素晴らしいものだった。演じる役は、元大家だったのが落ちぶれて紙くず屋をすることになった男。チンピラ風の若い男に普段はこき使われるのだが、酒を飲むと酒乱気味で立場が逆転してしまう。この演じ分けが巧みで、実にみるべきものがある演技だった。

   ドキュメンタリーとしても丁寧につくっており、面白かった。

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