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<かいじゅうたちのいるところ>原作は、1963年に出版されたモーリス・センダックの同名絵本。欧米では知らぬ者はないと言われる有名作品で、日本でも100万部を越えるベストセラーになっている。それを『マルコヴィッチの穴』のスパイク・ジョーンズ監督が実写化した。
原作絵本への愛
母と姉と3人暮らしの少年マックス(マックス・レコーズ)は大の寂しがり屋であり、母親を困らせてしまうこともしばしば。仕事で忙しい母親と年頃の姉に構ってもらえず、マックスの孤独感は募るばかり。
恋人を家に招いた母親が、言うことを聞かないマックスを怒鳴り散らすと、マックスは狼の着ぐるみを着たまま家を飛び出してしまい、追いかけてくる母親から逃げるように、やみくもに街を駆け抜けていく。そして、気が付くとボートに乗り、海の上に出ていた。流されるまま辿り着いた島には少々不気味な「かいじゅうたち」が暮らしていた。
原作では明確に描いていないマックス少年の人物像を冒頭の数十分で小気味良く描く手腕は、さすがスパイク・ジョーンズということだろう。また、このCG全盛時代において「着ぐるみのかいじゅう」というのは好感が持てる。ただそういった手法的なことよりも、取りわけ大きく感じるのは監督の原作に対する想い入れだ。
「子供の視点」に徹する
絵本の素晴らしさを失わせないように「子供の視点」を維持し、映像にしても、音楽にしても、常に夢に溢れている。『グレムリン』や『ネバーエンディングストーリー』を幼年期に観た時に感じた理屈抜きの「楽しさ」が蘇り、嬉しくなる。
ストーリー的には、島でマックスが成長していく中で最終的に執る「決断」に、やや描写不足の感が残ったが、この映画を観る上では、それはナンセンスな「大人の視点」なのかもしれない。
やはり子供に観てもらいたい作品だが、この「かいじゅうたち」の言動や行動は時に恐怖心を煽られるので「愛らしい」とはなかなか言いがたい部分もある。この「かいじゅうたち」たちの不気味な風貌こそが作品の魅力であるのだが、絵本よりも動画は不気味さを増すので、下手すれば幼少期のトラウマに……なんてことはないと思うが……。
川端龍介
オススメ度:☆☆☆