「大量出血」続いていた
一方、支援機構も法的な破たん処理にこだわった。理由はJALに染みついた「甘えの構造」だ。
地方空港をつくり続け、JALに就航を迫る政府や自民党関係者。あげく国内線の7割が、採算の目安とされている搭乗率60%を大きく下回った。そればかりでなくJAL 自体の体質にも問題が。運航トラブルが相次ぎ、客離れにつながった。
リストラを行ってもすぐに次のリストラに追い込まれ、経営を根本から見直す改革につながらなかった。そんななかで、綱渡りの状態だった資金繰りが限界に近づいた。
世界各国にネットワークを持つ航空会社は燃料代などのために随時支払いに充てる資金を用意して置く必要がある。JALの場合、最低700億円必要とされている。年明け、それが2百数十億円まで減る見通しになり、ぎりぎりの段階のなかで支援機構が押し切った。
キャスターの国谷裕子が「ぎりぎりの会社更生法の適用申請だったのですね」と。
番組にゲスト出演した冨山和彦・元産業再生機構COO(9月の『JAL再生タスクフォース』のメンバー)は「そうですね、ぎりぎり間に合った感じだったと思います」と次のような感想を。
「この会社は1昨年秋のリーマンショックのころからすでに『大量出血』の状態が続いていた。『出血死』すると燃料が買えず飛べなくなって、ますます資金繰りが悪化する。飛行を続け何事もなかったかのように再建したのがデルタとかユナイテッドです。止まって悲惨な状況になったのがスイス航空やかつてのパンナム。利害関係者が錯綜するなかで、深刻な事態についての認識のコンセンサスをまとめるのは、なかなか大変だったと思いますね」
もっとも、JAL再建はスタートラインに着いたばかり、本番はこれから。冨山は「古くて大き過ぎる組織、古くて大き過ぎる飛行機を抱えているので、ダウンサイジングをすぐやらないと……」と指摘する。
モンブラン
* NHKクローズアップ現代(2010年1月20日放送)