「自分が読みたい記事を書け」
ノンフィクション作家の佐野眞一さんが、私にこう語ってくれたことがある。「かつて『新潮45』が、えらく停滞していたときがある。そのとき、もう80歳を超えていた斎藤十一(新潮社の伝説の名編集者=筆者注)が乗り出してきて、雑誌の命はどういうことかということをいった。それは何かというと、こういう企画をやれば人様に喜ばれるとか、こういう記事を書けばあいつが喜ぶとか、そんなことは金輪際考えてはいけない。絶対考えてはいけない。そうではなくて、自分が読みたい記事を書け。これは雑誌作りの鉄則だといったのです」。
私も常々、編集部員が30人いれば、それぞれがおもしろいと思っていることが30あるはずだ。一人ひとりが、そのおもしろさを読者に伝えていけば、その記事に100人、あるいは数千人の読者がついてくれるはずだ。
今の若い編集者には、自分がおもしろいと思うことが見つからないと嘆く輩が多いと聞く。これぞ編集者失格である。<下へ続く>