あきれるJALのキックバック 文春が報じた「生資料」

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「今年は電子書籍元年」

   JALの倒産問題も各誌取りあげている。驚いたのは、文春の「JALよ、さらば」のなかにある、旅行会社へのキックバック(KB)制度である。「<東京~道東>の<適用運賃>が九千九百円、<KB額>八千百円、<実質収入>千八百円とある。<東京~道東>とは、羽田と釧路や帯広などを結ぶ東北海道路線のこと。<適用運賃>はエアラインの旅行会社に対する片道チケットの卸値だ。(中略)おまけに、このチケットは空弁(原注=空港で売られる弁当)付き。弁当代を差し引くと実質八百円程度の北海道チケットなのである」。

   このKB制度は、JALが始めた日本固有の販売促進制度だというのだからあきれる。その結果が8600億円を超える債務超過だ。こんな杜撰な会社に1兆円規模の税金を投入する意味があるのだろうかと考えさせられる。

   13日の朝日新聞朝刊1面に「電子書籍化へ出版社が大同団結 国内市場の主導権狙い」という記事が載った。「拡大が予想される電子書籍市場で国内での主導権を確保しようと、講談社、小学館、新潮社など国内の出版社21社が、一般社団法人『日本電子書籍出版社協会』(仮称)を2月に発足させる。米国の電子書籍最大手アマゾンから、話題の読書端末「キンドル」日本語版が発売されることを想定した動きだ」(朝日新聞より)

   「今年は電子書籍元年」ともいわれ、08年度は約464億円だったが、5年後には3000億円規模になるとの予測もある。

   しかし、出版不況をいい訳に、デジタル化にほとんど手をつけてこなかった日本の出版社は、そうなっても、「アマゾンが著作者に直接交渉して電子書籍市場の出版権を得れば、その作品を最初に本として刊行した出版社は何もできない」(同)のだ。

   あわてて、「講談社の野間省伸(よしのぶ)副社長は『経済産業省などと話し合い、デジタル化で出版社が作品の二次利用ができる権利を、著作者とともに法的に持てるようにしたい』」(同)ようだが、甘過ぎはしないか。お上に頼るのではなく、アメリカのように、新刊本もどんどん電子書籍市場に出して、コンテンツ市場を充実させなくては、「リブリエ」(ソニー)や「Σブック」(パナソニック)が撤退したのと同じ失敗を繰り返すことになる。

   書店側の顔色をうかがうのではなく、書店も巻き込んで、アマゾンに対抗できる超大型ネット書店を作り、そこへ魅力のあるコンテンツを多くの出版社から集めて、並べる。それぐらいの大きな構想がなければ、日本の電子書籍分野の夜明けは、まだまだ道遠しと思わざるをえない。


元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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