(C)2008 ARS Film Production. All Rights Reserved.
<海角七号/君想う、国境の南>ジェームス・キャメロン監督のアドベンチャー大作『アバター』や国民的娯楽映画でシリーズの20作目であり、最終章となる『釣りバカ日誌20ファイナル』など話題作の上映が決まっている2010年の正月上映作品の中で、『海角七号/君想う、国境の南』という台湾映画に注目している。
商業映画とは一線を画し、人間の実生活の描写に重きを置き、台湾社会を深く掘り下げる作品を作り続け、ホウ・シャオシェン等と共に「台湾ニューシネマ」の担い手であったエドワード・ヤンのもとでキャリアを重ねたウェイ・ダーション監督の初作品。
60年経てふたつの物語がリンク
日本統治時代と、その60年後のふたつの物語がリンクするラブストーリーだそうだが、この作品は、台湾で『タイタニック』に次いで歴代2位の映画興行成績を収め、空前の大ヒットを呼び込んでいる。
国外からは「芸術的視点」では評価を受ける台湾映画だが、国内では、ここ数年ハリウッド映画に押され、興行には結びついてこなかった。その中で「台湾ニューシネマ」を観て育った38歳のウェイ・ダーション監督の初作品は、新たな芽を生み、台湾映画そのものの転換作品と成りつつある。
台湾映画は、歴史の影響もあり、日本映画と通ずるものがあり、日本人にも馴染み深く、受け入れやすい。そして台湾では、日本のアニメ、ドラマ、音楽などが若者の間でムーブメントを起こしている。この映画は、その日本の流行文化に親しんでいる若者にも受け入れられ、日本統治時代に日本の教育を受けた高齢世代にも受け入れられているそうだ。正に台湾全土で一大ムーブメントを起こしているというわけだ。
日本の俳優の田中千絵、歌手の中孝介も出演しているのも見所のひとつ。年の初めに日本から距離も文化も密接している国の「新たな波」を体感してみてはいかがだろうか。もしかしたら、この作品が「2010年、空前の台湾ブーム」の幕開けになるかもしれない。<リンク>
川端龍介