時間経過と捜査の壁
あわてたのは押尾本人だけではない。押尾容疑者に目を掛けて援助し、六本木ヒルズの部屋を提供していた「ビーチ・ジョン」野口美佳社長(44才)も、その1人だ。女性セブンは、出産間近の野口社長の「全告白120分」を独占スクープしている。
野口社長は、三田署に拘束されていた押尾に、弁護士を通じて手紙を出したという。
「危機的状況の中でまず友達を呼び集めたことに憤りを感じたこと、すべて亡くなった女性のせいにしていたようだったので、『嘘をつくな』とすぐに手紙を書いて弁護士に託しました。『あなたが本当のことをいわない限り、私は絶対あなたを許せない。いままで一生懸命応援してきた。あなたの償いは事実を話し悔い改めることだ』という内容です」
なぜ「嘘をつくな」といいきれたのか? その疑問を、記者は聞いていないようだ。押尾との男女関係についても、当然ながら否定している。
今回逮捕されたのは、押尾と、押尾のマネジャー、それにMDMAを譲渡したのではないかという容疑で親友・泉田勇介も逮捕され、文春は「泉田勇介独占告白」を掲載している。
彼は事件当日も、押尾から「MDMAを抜くクスリはないか」と聞かれ、錦糸町のラブホテルで点滴ができるよう手配している。女性が死んでいるのを知っていたはずなのにである。警察の二十数回の事情聴取に彼は、「他にも『カプセルを買って来てくれ』という押尾からのメールが残っているようなのですが、アミノ酸を買って行っただけで、いままで再三説明してきた話。押尾を立件したいのは分かりますが、僕は押尾に薬物を渡していない」と話しているそうだ。
酒井法子の覚せい剤事件で、はるかに深刻であるはずの押尾事件が片隅に追いやられてしまっていたが、ようやく、遠回りしたが原点へ戻ってきた。だが、遺棄罪で立件するには、関係者が口裏を合わせる時間が十分にあったことなど、遅すぎた時間を取り戻すには難題が多いのも確かだ。