「可能なところから」
その結果は自殺率低下に結びついたが、とくに注目を浴びてるのがアウトリーチ(患者への積極訪問)という手法だ。医師、看護師、ソーシャルワーカー、就活支援スタッフなどがチームを組んで、悩める人のお宅を訪問。医療面だけでなく、生活面もきめこまかく支える。
統合失調症になってしまったトーマスのケースでは、ひきもりがちだった彼を、ソーシャルワーカーが患者が集まる地域のサッカーチームに連れ出すなど、社会と関わりを持たせるように工夫した。「体調はずっとよくなった」「アウトリーチがなければ、もっと孤立していただろう」とトーマスは笑顔を見せる。
さて、そんな夢のような国のVTRは終わり、現実へ。「すぐに日本でも――と思っても、なかなか難しいなかで、いますぐできることは?」と国谷裕子キャスター。「アウトリーチを含んだサービスを必要な人に届ける努力を、可能なところからはじめることだ」と院長。
どうやら長い闘いになりそうだが、こんな「大国」は一刻もはやく返上したいものだ。
ボンド柳生
* NHKクローズアップ現代(2009年12月1日放送)