このドラマまじ? だったら怖くて出産できない…

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<ギネ――産婦人科の女たち>藤原紀香が走る、走る、走る。どう見ても短距離種目、100メートル走のフォームだ。妊婦を乗せたストレッチャーも、ものすごい勢いで走る。曲がる時はキキーッと音がして火花が散りそう。いくら急を要するとはいえ、病院の廊下をこんなに爆走していいのか。廊下を歩く患者をはね飛ばし、陣痛の妊婦を振り落としてしまうんじゃないか?

   医師不足による産婦人科現場の窮状が叫ばれて久しいが、その中で精一杯仕事をする医師、看護師たちを描く。長時間連続勤務、連夜の当直、常に呼び出されては走る……。もう、見ている方が息苦しくなってくる。本当にこんな状態なら、怖くて産科医にはなれないし、子供も産めないなあ、と思ってしまう人が多いのでは? だって、医療ミスが起こらない方が不思議だ。

患者が死亡、叫び続ける

   ヒロインのキャラクター設計はかなり特異。最初はまったく感情移入できないようになっている。柊(ひらぎ)奈智(藤原紀香)は「命を救うことしか頭にない」医師。産科全体が手一杯なのに勝手に救急搬送を受け入れてしまうし、新人医師の玉木(上地雄輔)の指導医なのに、玉木が話しかけても全く無視。むやみと無口で無表情、KYの極致だ。1話、2話ではほとんどセリフがなかった感じ。

   離婚していて、男の子がひとり。この子とのふれあいが唯一人間らしい表情を見せる時だが、保育園のお迎えもままならない。この辺りは身につまされた。

   産科の医師不足の一因ともいわれる医療裁判も正面から取り上げている。夫婦で小さな店を営む徳本慎一(八嶋智人)の妻(西田尚美)は、出産後、容態が急変。狂ったように心臓マッサージを続ける奈智。その甲斐もなく死んでしまった時の狂乱ぶりがまた常軌を逸している。叫び続け、暴れ続ける手足を4人がかりで取り押さえられ、仰向けに運ばれる。

   紀香、何かを吹っ切って性根を入れ直したつもりかのような熱演。しかし、役柄そのままに、本人の「つもり」が先走って、ドラマの中ではやや浮いているような気も……。

子ども手当で安心できる?

   妻に死なれた慎一は、当初は「よくやってくれた」と医師らに感謝しているが、弁護士の訪問を受けるうちに疑惑が広がり、奈智たちを告訴する。弁護士の唆(そそのか)し方をいかにも狡猾そうに描いているのは、奈智の側に立っているからか。遺族のやり場のない気持ちにつけ込み、訴訟に持ち込んで巨利を得ようとする弁護士の存在はアメリカではよくあると聞いていたが、いよいよ日本でも増えてきたということか。

   産科医長役の松下由樹はさすが安定した演技で、重厚さすら漂わせている。婦人科医長役は中村橋之助。歌舞伎の演技はテレビドラマと質が違うので、歌舞伎役者が現代劇ドラマに出るとしばしば違和感が生じてしまうが、これは自然さの範囲内に収まっている。

   奈智がどうしてこんなに頑(かたく)なな人間になってしまったのか、それが徐々に解き明かされていくらしい。母の死とかいろいろあるようだが、はたして説得力があるのだろうか。

   それにしても、少子化対策としては、2万6000円の子ども手当を配るより、安心して出産でき、働きながら子育てできるような態勢を整える方が先決なんじゃないだろうか。<テレビウォッチ>

カモノ・ハシ

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