<テレビウォッチ>ダム建設の見直しなど、民主党政権の進めようとする政策と地方の現場との摩擦が目立っている。民主党の内部でも「ねじれ」が起こり、これまた難航しそうなケースが、またひとつ今回の番組で紹介された。
総工費2500億円をかけた諫早湾干拓事業。湾に入ってくる潮の流れを堤防でどーんとたち切り、そこに農地を造った。現在までに40ほどの農家が入植し、じゃがいも、白菜などを栽培。取材のカメラは青々と広がる畑を捉えていた。その半面、周辺の海ではそれまで見なかったような貝の大量死が発生するなど、漁師らを中心に堤防に対する不信感は根強い。
政策集「開門前提に対策」
民主党は以前から諫早湾事業の見直しを掲げており、政策集には「開門を前提に対策を進める」と明記。海水を締め切る堤防を開ければ、水が流れ込んできて、ほら元通り――とはいかないまでも、環境面で好影響をもたらすだろうというのだ。
漁師や環境保護団体は民主党に期待を寄せる。ある漁師は「民主党政権は私たちの海を取り戻してくれる。最後のチャンス」と話した。
ところが、干拓地に入植した農家らにしてみれば、たまったもんじゃないとばかり、大反対。高潮に襲われて農地がやられることを警戒してるのだという。開門反対派は「事情もわからない他府県の人にとやかく言われたくない」などと気勢をあげる。
「最後は政権が責任持って」
そんななかで、民主党長崎県連も堤防開門反対の姿勢を強め、開門撤回を中央に求めていく方針なんだそうだ。県連の諫早市議は「農業が順調で、開門すればそれがゼロになるんですよ、という現実をどこまで理解して開門しろと言っておられるのか」などと猛反発していた。
「厄介な問題ですけど、最後は政権が責任を持って決めなければいけない」とスタジオゲストの片山善博・慶応大教授(元鳥取県知事)。
政権が何かを決めるまでに、「決めなければいけない」ことがねずみ算的に増えていきそうだ。
ボンド柳生
*NHKクローズアップ現代(2009年10月20日放送)