<テレビウォッチ>1号店が誕生して35年が経ったコンビニエンスストアが今、大きな曲がり角にきている。
「便利さ」を売り物に、24時間営業、公共料金の取り扱い、銀行のATM……といった数々のサービスを身につけながら進化してきたコンビニ。
番組が、「便利さ」より「安さ」という消費者のニーズ変化のなかで苦境に立たされている『コンビニ冬の時代』をどう乗り切るか、取り上げた。
「ついで買い」が戻らない
コンビニの主力商品は、年間10億食の売り上げがある弁当。この主力商品にサンドイッチやおにぎりを加えると、売り上げに占める割合は3割に達するという。
その主力商品の売り上げが、今伸び悩み、青息吐息の状態なのだ。
コンビニ最大手のセブン・イレブンが、傘下のチェーン店に消費期限切れの迫った弁当の値引き販売を認めて2か月がたつ。
それまで廃棄処分が義務付けられていたのを一部の店主の要請で公取委が改善命令を出し実現したものだが、スタートして2か月たった現場の実情は複雑のようだ。
千葉県のベットタウン・佐倉市。ここに弁当の値引き販売を訴えていたセブン・イレブンのコンビニ店がある。9年前に銀行の支店長を辞めて同店のオーナーになった尾崎健二店長。
開店した当初、順調な滑り出しだった。しかし、3年目を過ぎたころから複数のライバル店出現で売れ行きが落ち始めた。
当初この地域には9店舗のライバル店しかなかったが、2倍近くになり、とくに同じチェーン店が4つも増えた。
熾烈な競争のなかで売り上げダウン。なかでも響いたのが主力である弁当のダウンだった。ついでにカップ麺やサラダを買う「ついで買い」の売り上げも減った。
店が負担する消費期限切れの売れ残り弁当の損失をなくそうという窮余の策が値引き販売の要請だった。
値引き販売がスタートして2か月。夜8時過ぎると安くなった弁当を買いに来る客が増えた。が、店長の顔は冴えない。
尾崎店長は「値引き販売によって廃棄処分の量が約半分の量に減りました。私自身はよかったと思っている」というのだが、新たな問題も……
ベースアップなし、賞与大幅カットのなかで、客の「ついで買い」がなくなったのだ。
さらに、同じ地域にスーパーが7店あるが、最近弁当コーナーを充実させ、価格もコンビニより大幅に安い。
「安さ」につられてコンビニの得意客だった工事関係者やサラリーマンがスーパーを利用するようになったことも気になる。
尾崎店長は「必要なもの以外は買わないということでしょう。シビアになった」とタメ息をつく。
1店あたり3000人に近付く
キャスターの国谷裕子が「店が乱立する過当競争のなかで、お客の財布のヒモが固いとなると大変ですね~」と、つい声も湿っぽくなる。
番組に出演した関西学院大大学院の藤田太寅客員教授は次のように指摘する。
「遠くでも『安い』方を選ぶ客の行動に変わってきている。『近い』『いつでも買える』がコンビニの独壇場ではなくなって来て、24時間営業はスーパーもドラッグストアもやっている。
チェーン店を増やせば会社全体は儲かる仕掛けになっていたが、1店舗、1店舗は生きるか死ぬかの大変な競争を強いられている。その『ズレ』の見直しが今、迫られている」
かねてから1店舗当たりの人口が3000人を下回るとコンビニの経営は苦しくなると言われていた。1998年に4000人を超えていたのが今は3000人に限りなく近づいているという。
愛知県を中心に650店舗を展開しているココストアでは最近、店舗内に本格的な調理場を設け、工場からの運送費節約で500円台中心に「できたて弁当」を販売している。
従来のコンビニの概念にとらわれない『コンビニ冬の時代』を乗り切る模索がすでに始まっているといえる。
モンブラン
*NHKクローズアップ現代(2009年10月14日放送)