<テレビウォッチ> 北京から国谷裕子キャスターが伝える「シリーズ 中国建国60年」の第2夜は、中国政府の外交顧問、王逸舟(北京大学教授)へのインタビューが中心だった。
エコノミックモンスター
国谷 エコノミックモンスターの如く見られ、周辺国から警戒されている中、中国はどんな国になろうとしているのか。
王 確かに中国にはエコノミックモンスターというイメージがある。が、30年後は経済的に大きな力をもつだけでなく、周辺の国々、国際社会に文化的な面でも大きな貢献ができる国になっていると思う。
国谷 7月の米中戦略経済対話でオバマ大統領は、米中関係が21世紀をつくると言った。中国に接近を図るアメリカの姿勢をどう受け止めるか。
王 アメリカは超大国で、中国は最大の発展途上国で人口が最も多い。両国の関係は自ずと重要になる。しかし、中国とアメリカがものごとを決めて行けば他の国にかまう必要はないと言う人もいるが、それは間違いだ。いま中国は、国家指導者、軍のトップ、外交官まで、中国とアメリカをG2という人はいない。
国谷 この度のG20で、世界経済の不均衡是正がアメリカによって提議され合意された。これによって中米関係に変化は起きるか。
王 不均衡には2つある。1つはオバマ大統領の言う不均衡だ。アメリカは多額の赤字を抱えながら紙幣を印刷して中国から商品を輸入している。中国は内需や消費が不足して輸出に頼っている。これは正しいが全てではない。もう1つは、発展途上国と先進国の不均衡だ。技術や資金面、生活レベルを見ても先進国は高く、途上国は低い。既存の制度を改革し先進国と途上国の間の不均衡を改善しなければならない。
「人民元は小学生」
国谷 金融改革は世界が直面する大きな課題だ。人民元を国際化してドル依存を軽減する方向に向かうのか。
王 ドルの指導的地位はまだまだつづく。中国は今すぐ人民元がドルにとって代わることを望まない。ドルを博士だとすれば人民元は小学生だ。アメリカと協力し徐々に発言権を増して行きたい。
国谷 鳩山新政権の東アジア共同体構想に、中国はどうのぞむか。
王 鳩山新総理が胡錦濤主席に東アジア共同体構想を提案した。このとき胡錦濤氏は何も触れなかったが、その後、中国と日本は協力を強化すべきだと私に述べた。よいスタートを切ったと思う。中国の古いことわざに、1つの山に2頭のトラはいられないという言葉があるが、今は通用しない。こうした古い考えは捨てるべきだ。中国と日本が協力すれば、通貨、安全保障、貿易において、アジア全体が新しい局面を迎えられると信じている。
王教授の言葉の端々に自信があふれ、インタビューの合間に挟まれる映像も、この国の『光の部分』ばかりだった。が、「本当に責任ある、国際協調できる大国になって行けるか、今後問われることは間違いありません」が国谷の結びだった。
アレマ
*NHKクローズアップ現代(2009年10月1日放送)