<テレビウォッチ>がんを考える2夜連続シリーズの1回目。3、40代の子育て世代に乳がん患者が増加したために、「子どもにどう伝えたらいいか」という新たな「告知」の問題が生まれているという話だ。
大阪市の37歳の主婦の場合。5年前に乳がんと診断され手術を受けたが、小学校と幼稚園の2人の息子にはいえなかった。「がんイコール死と、自分で受け止めるのが精一杯だった」という。
ウソつき続けることに
再発が不安だが、いまだに言えずにいる。乳がんの本はカバーを裏返しにして隠し、「できれば隠し通したい。知らないまま終わらせてあげたい」という。
逆に話した人がいた。都内の40歳の女性。11歳と6歳の娘がいるが、はじめがんを隠そうとした。2週間入院して手術したときも、「お腹の具合が悪い」、月に1回の検診のときもウソをついた。胸の傷を見られまいと風呂にも一緒には入らない。
すると、子どもたちに変化が起きた。病気の話をすると避けるようになったのだ。目に見えないみぞ、悩んだ末1年後に話した。長女はショックで泣き出したが、「話してくれてよかった」と、家事を手伝うようになった。いまは、「明日から入院しますから、よろしく」といえる。励ましてもくれる。
名古屋市立大病院こころの医療センターの明智龍男は、「伝えれば情報を共有でき、家族の結束は強まる。一方隠していても入院はする。夫婦でもひそひそ話になると、子どもが疎外感をもつ。そして、ずっとウソをつき続けることになる」という。
都内の30歳の男性は、心に深い傷を負った。小学校のとき父親が入退院を繰り返していたが、病名は知らされなかった。ある日家に帰ると、父が棺に入っていた。「知っていたら、何かできたかもしれない。顔を見せるだけでもちがったのではないかと、申し訳ない思い。正直今も消えていない」という。