大雪山遭難と「歴史的」タイトル 新潮VS文春「記事」の勝者は?

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文春、横峯参院議員にロング・インタビュー

   次に、大雪山遭難記事。新潮のタイトルは「『大雪山』死の行軍『私はこうして死神から逃れた』」。このタイトルは新潮の「歴史的なタイトル」からもってきている。1958年(昭和33年)に起きた飛行機事故で、多くの人間が亡くなった。ほとんどの新聞や雑誌が、何名亡くなったのかに関心をとられていたとき、新潮の斎藤十一編集長は、運よく、乗るはずだった同機に、何らかの事情で乗らず、命が助かった人たちに焦点を当てようと考える。そこで付けたタイトルが「私は死神から逃れた―七時三十五分をめぐる運命の人々」(9月1日号)である。

   今回も、「生死を分けた原因は何だったのか。生存者が証言する」として、話しを聞いている。

   1人の女性は、フリース程度の防寒着しか持っていかなかったという。だが、災害救助用のアルミシートを持参し、それを体に巻き付けて助かった。

   ガイドたちの、この山に対する知識不足や遭難連絡の遅れ。中高年たちの装備不足など、様々な要因が重なったとはいえ、結局、「生死を分けたのは、登山経験や知識、装備の差などではなく、単なる運だったのかもしれない」のだ。この記事は両誌互角。

   さて、お騒がせナンバーワン参議院議員・横峯良郎氏の記事はどうか。6月12日、横峯氏が親しい幡ヶ谷の「くろ豚亭」に、「分厚い胸板に太い腕、大柄な男たち3人と、腕や足にタトゥーを施したチンピラ風の男が押しかけてきた」(新潮)のだ。3日間、その連中が店に居座り、大声を張り上げたりして嫌がらせをし、終いには店の売上金から30万円を脅し取ったのだという。そのために、店側が代々木警察に被害届を出し、共同出資者ら6人を恐喝容疑で逮捕したのだ。

   これは、経営をめぐってのトラブルで、店の共同出資者の片方が仕組んだらしいのだが、そのバックに横峯議員がいて、このごつい連中は、彼が面倒を見ているプロレスラーたちというのだ。

   不思議なのは、被害届を出した店のオーナーは、カネが戻った段階で、被害届を取り下げようとしたのだが、警察・検察側が、「それはできない」と叱りつけられたそうだ。捜査当局のほうが、この事件にご執心なのだ。

   背後に横峯議員がいるから、警察は熱心なのではと聞かれて、彼は「俺は警察の点数稼ぎだと思う。警察ってさ、よほどのことがないとじゃまくさがってしないじゃん。(中略)そういうことで逮捕するんだったら、俺なんか小便したって逮捕されるんじゃない」(文春)と答えている。

   この記事は、横峯氏のロング・インタビューをした文春に軍配を上げたい。

   この件も、大事になれば、民主党の優勢にヒビが入りかねない。民主党の中にいる「懲りない面々」には、鳩山代表も頭が痛いことだろう。


元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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