工場閉鎖で「ガラガラ崩れる街」 「選択と集中」の余波

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   <テレビウォッチ>見慣れたテレビ番組のスタジオの模様が変わると、だいたい最初は奇異に感じるものだ。それも見続けているうちに慣れて、しばらくすれば奇異に思っていたことすら忘れてしまう。

   それにしては、クローズアップ現代のセットは数か月経っても一向になじめない。スッキリ、ガランとしたお部屋の中央に国谷裕子キャスターがポツンと座っている。それに加えて、今回の放送「失業率5.2% 自治体の苦闘」では、VTRの冒頭でもスタジオ以上のガランドウをいきなり見せつけられ、うなだれるような話を聞かされる、ときては視聴意欲も完全に夏バテだ。

   さて、ここは鹿児島県は出水市。画面に映し出される広大にして空虚な空間は、閉鎖されたパイオニア工場の内部である。人口5万人のこの街で、この工場と間もなく閉鎖されるNECの工場が1000人の雇用を生んでいた。数十年にわたって街を支えてきた大黒柱が2つ、倒れてしまった――。

   番組によれば、この不況下に、生き残りをかける企業が「選択と集中」を進めてるおかげで、全国で工場の閉鎖が相次いで起きてるそうだ。ただし、出水ほど悲惨な例はそうないのだろう。なぜなら、こうした「現象」を取り上げる際は、前半のケーススタディで数例のバリエーションを出すのが通例なのに、今回は出水のみが長い時間をかけて紹介されていたのだ。

   出水市のプロジェクトチームの試算では、雇用者の所得にして約60億円、税収で数億円が吹っ飛ぶ。求人倍率1倍を大きく下回るなかでは、雇用の吸収もできるはずもなく、住民の大量流出がはじまっている。「出水市の経済というか、この街がガラガラと崩れていくのかなあと」と、顔色失ったプロジェクトチームの係長が伏し目がちに言葉を絞り出していた。

   まるで炭鉱がなくなったあとの夕張のような事態だが、救いと希望は、次の工場を誘致できる可能性がまだある、ということ。リポートの途中には、少々古びた感じの市庁舎が映ったが、その上には映画で見るような黒い雲がかかっていた。

ボンド柳生

   * NHKクローズアップ現代(2009年6月30日放送)

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