イラン革命の「変質」
東大の山内昌之教授は、「最高指導者は超然として中立のはずが、1つの派に組した。また、シーア派は迫害を殉教ととらえる。市民の殺害に最高指導者につながる連中が関わったとなれば、問題は深刻だ」という。
さらに、体制内部にも対立が生じている。最高指導者の任免権をもつ専門家会議のラフサンジャニ議長(元大統領)がムサビ元首相を支持して、ハメネイ師と対立した。選挙の討論会では、アフマディネジャド大統領が、公然とラフサンジャニ議長を批判する一幕があった。これも従来は考えられないことだ。
ラフサンジャニ議長は現実感覚と調整能力のある政治家で、事態収拾への期待もかかるのだが、支持基盤は中間層。対してハメネイ師/アフマディネジャド大統領は貧困層だ。この亀裂は深い。
また、12万人といわれる革命防衛隊の独走が、軍事政権化への懸念を生んでいる。ハマス、ヒズボラへの支援も核開発も治安維持も、彼らが中心だ。改革派は、ハメネイ師らが、これを自分たちの力にしていると批判する。
今回の騒動の中心は若い世代だった。革命も知らなければイラン・イラク戦争もほとんど知らない。変化への欲求が根底にある。
山内教授は、「イランは日本と違って、多子若齢化だ。彼らを無視しては体制が成り立たない。イラン革命も30年を経て、変質が始まったのではないか」とみる。
イスラム過激派の原点は、イラン革命だ。これによって、世界がどれだけ変わったか。あらためて、30年の歳月を思った。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2009年6月29日放送)