<テレビウォッチ>今週は、大ネタはないが、特色のある記事が、それぞれの週刊誌にあり、なかなか読ませた。
中でも、文春の「長嶋茂雄と一茂 小誌だけが知る『骨肉バトル』」が面白い。
先週発売された「フライデー」が、現在の長嶋氏のバックには、「女帝」と呼ばれる、一昨年亡くなった亜紀子夫人の実弟の妻がいると書いた。
「異例」長嶋茂雄の抗議
それに対して、長嶋茂雄名で、「フライデー」に強く抗議し、訂正と謝罪を求めるという声明文が、マスコミ各社に送られたのだ。
どんなことを書かれても、自らは抗議しないのは、皇室と長嶋だったはずが、ここまで怒るとは異例中の異例だ。
発行元の講談社も、「ミスタープロ野球」で最後の大スターである長嶋氏の抗議に、どう対処したらいいのか、頭を抱えている。
文春は、この声明文の「娘たち、義理の妹が献身的に支えてくれています」というところに注目した。息子・一茂のことがないのだ。文春は、以前にも、長嶋父子の葛藤を記事にしているが、いまや、そのレベルを超えて「骨肉の争い」へと発展しているという。
紛争のきっかけは、「長嶋茂雄」という偉大な名前を、一茂がつくった「ナガシマ企画」が、特許庁に商標登録してしまったことから、勃発する。
6月半ば、長嶋は、レターヘッドに家紋が入った文書を、スポンサーやテレビ局に送り、肖像権や商品化権などは、今後、「ナガシマ企画」ではなく、自分の事務所だけで行うと宣言したのだ。
いつの世にもある、父と息子の葛藤ではあるが、長嶋家もその例にもれなかったということか。
長嶋のライバル、王貞治は、老人ホームに入っている107歳の母親の「老々介護」のために、自身のガンと闘いながら、通っていると、先週の女性誌に出ていた。
ともに妻を失い、病と闘いながら、懸命に生きている姿を見ていると、我々ON世代は、感慨無量である。ともに、いい父親ではなかっただろう。しかし、野球バカ2人が、サラリーマンたちに夢を与え、明日の活力になった時代があったのだ。
不肖の子どもたちは、そのことを忘れてはいけない。
朝日記事は「007の小説」?
「朝日新聞阪神支局襲撃犯の告白」という大虚報をしてからの新潮の勢いがすごい。先には、鴻池官房副長官のW不倫をすっぱ抜き、首を取ったが、その後に始めた「大新聞の押し紙」問題は、執念を感じさせる凄味がある。
長年隠し通してきた大量の、読者に渡らない新聞「押し紙」は、大新聞の恥部であった。新潮が4回にわたって追及してきたことは目新しいことではないが、新聞側は、もうそろそろ認めて、本当の実売部数を公表する時期に来ているはずだ。
「繰り返しお答えしていますが、弊社には貴誌が取り上げているようないわゆる『押し紙』はありません」(朝日新聞広報部)といういい方は、もはや見苦しいと思うのだが。
その新潮が、仇敵・朝日新聞の報道を「虚報」と決めつけたのだ。件の記事は、「朝日新聞『金正雲・胡錦濤会談』大虚報のケジメの付け方」。読者にしてみれば、自分のところで大虚報をしておきながら、いまだケジメもつけてないのに、朝日にこんなこといっていいのかしらと、どぎまぎしてしまうほどの威勢のよさなのだ。
一面にでかでかと「『後継』正雲氏が訪中 金総書記の名代 胡主席らと会談」というスクープが掲載されたのは6月16日の朝刊。
しかし、その日の中国外務省の定例記者会見で、秦剛報道官が、その報道を完全否定してしまった。それも「まるで007の小説を読んでいるようだ。続編には何を書くのか?」と笑われてしまったのだから、朝日は面目丸つぶれである。
ここからがすごい。まず、「コリアレポート」の辺真一氏に、「『一大スクープ』を『一大誤報』と言われたのですから白黒をつけるべきでしょう。(中略)購読料を取っている朝日には読者への説明責任もあります」といわせ、コラムニストの勝谷誠彦氏にも「あの会社は無謬主義、つまり朝日が間違えるワケがない、というのが身上。(中略)今回も頬被りし続けるでしょうね」といわせたあと、こう結んでいる。
「様々な相手に声高に『説明責任』を求め、6月12日付社説では西松建設を巡って民主党に〈自浄力が問われ続ける〉と説いた大朝日。今回の『虚報』疑惑を闇に葬ることなく、しっかり『ケジメ』を付けなければ、秦報道官ばかりでなく世界のメディアに嗤われますぞ!」
朝日を新潮と置き換えれば、先日の大虚報に対して、我々が、新潮に対していっていることと同じになる。
よくもぬけぬけといいやがるという思いは、朝日にはあるだろうが、それにしては、この記事を否定した朝日の記事の何と小さいこと。都合の悪いことは小声で、こちらに分のあるときは大音量でというのは、いずれのメディアも変わらないということがよくわかる。
麻生政権の断末魔は刻々近づいているが、民主党にもそう勝たせたくないというバランス感覚からか、今週号も、民主党議員がらみのスキャンダルがそこここにある。中には筋のよさそうなものもありそうだが、あまりにも細切れで、迫力不足。何も無理して、新聞のように中立公正を気取らなくてもいいんじゃないかと、思わず茶々を入れたくなる。
蛇足で1本。朝日でジャーナリストの黒木昭雄氏が追いかけている、岩手県で起きた殺人事件で指名手配されている容疑者をめぐる不可解な警察の捜査への疑問。一読の価値あり。