<テレビウォッチ> 臓器移植法改正案4案のうち、「脳死を人の死とする」「年齢制限なし」のA案が賛成多数で衆院を通過した。棄権した共産党を除き、各党とも党議拘束をはずしての採決だったが、賛否は割れた。
賛成263、反対167。記名投票なので名前がわかる。
賛成は森喜朗、小泉純一郎、福田康夫、細田博之、鳩山邦夫、中川秀直、小沢一郎、岡田克也、菅直人、渡辺喜美……
反対が麻生太郎、石破茂、谷垣禎一、太田昭宏、鳩山由紀夫、前原誠司、長妻昭、原口一博、田中眞紀子……
投票しなかったのが、安倍晋三、石原伸晃、与謝野馨、志位和夫……
この判断がいかに微妙か。反対した鳩山由紀夫代表も「脳死を人の死としていいのか。こだわりがあった。個人の倫理観の問題。さはさりながら、道は開かれるべきだ」となお揺れる。
臓器移植を待つ人たちがいる。一方で、脳死を死と認められない家族……とりわけ、現行法で対象から除外されていた15歳以下の子どもたちが焦点だった。日本では移植できないために、海外へいく例が後を絶たない。WHOが、これを規制する動きが背景にあった。
いずれも議員立法でA、B、C、Dの4案が提出されたが、A案がもっとも踏み込んだ内容だ。家族は判定も提供も拒否はできるが、法律が「脳死は人の死」とした以上、扱いは現行法と違ってくるだろう。反対派の懸念はこのあたりにある。まだ論議が足らないだろうと。
みのもんたが「まだ動いている臓器を取り出したら、死んでしまうもの」というのは、「今頃何を」のレベルだが、専門家ほどA案が通るとは思っていなかったらしい。
TBSの厚労省担当、牧嶋博子は、「通るとしてもD案だと思っていたので驚いた」という。A案だと、「脳死体」という言葉があるように、死体の扱いになっていくので、現場の医師も混乱する。
また親族優先の提供は現行法とは逆。さらに子どもは脳死の状態が続くことがあり、親の虐待で脳死になった子どものあつかいなど、問題はいろいろあるという。
議員立法であるため、提案者の答弁もぶれていたうえ、委員会で生煮えのまま本会議へいってしまった。牧嶋は「もっと討議をしないと後悔することになる」という。
与良正男は、「大事なのは国民のコンセンサスだから、参院審議は慎重にしてほしい」
牧嶋も「国民もわからないが、議員もわかっていない人がいる。本当は脳死臨調みたいなものを開いてやるべきものではないか」
みのが「それほど微妙な法案審議で、何人が居眠りをしていたか」と怒る。
A案に反対の人でも、海外で手術する子どもへの募金には応ずるかもしれない。それ自体が矛盾だが、どちらも本気だろう。それほどに微妙な問題だ。
参院での可決は微妙で否決なら廃案。また解散でも廃案になる。