「売りの技術アリ 売れる政策ナシ」 温暖化対策「日本の戦略は?」

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   <テレビウォッチ>2020年だ2050年だと、地球温暖化対策の話はどうも実感が伴わないきらいがあるが、実のところ地球の現状は待ったなしに近いようだ。年末には国連で新たな温室効果ガス削減の枠組みが決まるが、状況は複雑だ。クローズアップ現代が、既に始まった交渉の裏側を伝えた。

   温室効果ガス削減は、1997年の京都議定書から始まったが、枠組みは2012年まで。次の段階が13年から20年までの中期目標の設定になる。しかしこの間に世界の排出量は増え続け、状況は大きく変わった。とくに途上国が大きい。

注目されなかった日本の「15%」

   90年当時34%だったのがすでに51%を占め、とくに中国は20%と、アメリカと並んでトップになった(ちなみにEUは12%、日本は4%)。途上国は、京都議定書では削減対象に入らなかったが、これをどう削減に引き入れるかが将来を左右する。

   麻生首相はさきに、日本の中期目標として05年比で15%削減を打ち出し、「野心的だ」と胸を張った。EUの13%、米の14%の上をいき、世界をリードできるという意味である。

   しかし前段の論議の過程で、経済界は「国際競争力が落ちる」と、出したのは4%。日本経団連は新聞広告で「家庭の負担も増す」とやって、「脅しだ」とひんしゅくを買った。一方環境保護団体は「先送りは、後の世代の負担になるだけ」と21-30%を主張した。15%は、その中庸ということになる。

   この数字は、先にボンで開かれた国連の準備会議で示されたが、ほとんど注目されなかった。会議の焦点がまったく別のところにあったからだ。

   蟹江憲史・東工大准教授は、「コストはいま払うか、先の世代が払うか、いずれかかってくるもの」という。数字はその判断次第というわけだ。「リーダーシップをとるにはそれだけでは足らない。別の公平性の論議があるからだ」と。

歴史的公平性求める途上国

   事実準備会合の焦点がそれだった。削減の枠組みに途上国を取り込みたい先進国に対し、中国を中心とする途上国は、先進国にさらなる大幅削減を求めてきた。その根拠のひとつが「歴史的公平性」だ。先進国は長年にわたって排出し続けてきたではないか、というのだ。

   また、中国はときに、「1人当たり排出量」など別の物差しを持ち出す。総量では大きいが、人口が大きいから、1人当たりなら小さくなる。したたかな中国を中心に、途上国は「まず先進国がやれ、われわれは後から」という流れになっている。

   ただ、先進国では、アメリカの復帰が大きい。ブッシュ時代はそっぽをむいていたのが、オバマ政権は環境問題に正面から向き合う。日本はいま、米と共同歩調を取って中国の説得に当たるが、ボン会議後、すでに中国側からの接触があったという。

   蟹江准教授は、「中国は国連の場では常に建前を出してくるから、『削減は先進国から』となってしまう。しかし、2国間なら話ができる。パッケージ・ディールといって、対立するもの、妥協できるものをパッケージに組み合わせてまとめる手がある」という。

   カギは、日本が持つ技術と資金である。ボン会議でも日本は大いに途上国に働きかけた。中国もいま、風力発電などエネルギー源の転換に動き始めている。日本の優れた技術を生かす道は十分にあると見る。

   「ただ、ビジョンがない」と蟹江准教授はいう。「売りの技術はあるが、売れる政策がない」と。

   番組は「日本の戦略は?」と始まったのだったが、確かにそれが一向に見えてこなかった。経団連の発想からは無理か。

                                        

ヤンヤン

   <メモ:京都議定書>1997年京都で開かれた気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で採択された議定書。先進国に対し2008-12年に温室効果ガスの削減を義務づけた。01年アメリカが、「途上国の削減義務がない」などとして離脱したが、オバマ政権で復帰。今年末の会議はCOP15で、13- 20年の中期目標の設定を目指す。締約国は、2050年までに1990年比で少なくとも50%削減という長期目標を共有している。

NHKクローズアップ現代(2009年6月15日放送)
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