常用漢字巡る権威VSネット 「大論争」になる理由

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   <テレビウォッチ>27年ぶりに改定作業が進められている「常用漢字」。パソコンやケータイの普及で「読める=書ける(打てる)」の時代になったのを受けて、基本的には数をだいぶん増やす方向だったらしい。ところがいざ委員会で議論してみると、『大論争』が勃発。

   番組によれば、反対に回ったのは、おもに教師をはじめとする学校教育関係者だという。そこには歴史的な経緯もあるそうな。常用漢字の元となった当用漢字は、漢字の数を大幅に制限したもの。戦時中に難解な漢字が多く使われ、国民の知る力が奪われたのではないかとの反省から、公に使う漢字は誰でも等しく読み書きできるべきだ、との理想が込められているという。そんな経緯もあって、「漢字は正しく書けるのがあるべき姿ではないか(常用漢字をいたずらに増やすべきではない)」と、委員の元国語教師は強く主張した。

俺、オレ、おれ…

   そんなこんなで議論は膠着。文化庁は別角度からの「実態」調査に乗り出す。これまでの新聞、雑誌などに加えて、ネット上で使われた漢字、延べ31億語を分析し、出現頻度の高い漢字を加えようとした。

   すると、顔文字やアスキーアートに使われた漢字が上位に顔を出し、栄えある1位は「俺」になった。これが有名な「俺」論争を引き起こす。

   さすがに1位の「俺」は追加するのが自然な流れと思いきや、「『俺』を入れてしまえば、常用漢字は『まあ作りました。参考してください』程度の存在になってしまう」と、とある大学教授。

   漢字の「あるべき姿」を体現すべき「常用漢字」が、「俺」などという下卑た言葉を用ふるネットごときの「実態」に流されては、まるで面子、存在価値を失うといったことらしい。そして、ここでも喧々囂々。

   結局、「俺」は改定試案に入ったが、ネットで使用頻度の高かった漢字のほとんどはオミットされた。追加される漢字の数自体、当初の見込みより抑えられたのだという。

   電子機器時代になって、常用漢字そのものの意義もだいぶん薄れたようにも思えるが、今回の放送を見る限りでは、まだまだ常用漢字は民主社会の木鐸として機能すべし、との考え方が、少なくとも多くの委員にはあるんだなあ、という印象であった。

ボンド柳生

<メモ:常用漢字>公文書、新聞、テレビなど一般の社会生活における漢字使用の目安となる字種。現在1945字だが、数を増やすなどの改定を施した「新常用漢字表」が定められる予定

   * NHKクローズアップ現代(2009年6月9日放送)

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