<湯けむりスナイパー>わが遠藤憲一、初主演! テレ東のしかも夜12時過ぎという時間帯だけど、心ある皆さん、ぜひ見てね。テレ東はこのごろ、経済番組と、おトク感第一の旅・食い物番組だけでなく、連続ドラマにも力を入れているようだ。たとえば、昼ドラの「ママはニューハーフ」も、ユニークな設定とほのぼのムードがなかなかいいのですね。
秘境の温泉宿・椿屋で働く源さん(遠藤憲一)は元殺し屋。「標的は誰もが殺すに値する人間だった」というところが気に入った。「湯けむりスナイパー」とタイトルが出て、クレージーケンバンドの主題歌をバックに殺し屋スタイルで大暴れするスローモーションは、何度見てもいいなあ。
人生をやり直したいと思って引退した源さんを取りまく人たちは、女将(伊藤裕子)をはじめ、みんな善い人ばかり。スナック「花ちゃん」のママ(松田美由紀)や元有名ストリッパー(池谷のぶえ)、親子心中の生き残りの少女仲居・由美ちゃん(大野未来)。ワケありの人々も、根っこのところでは一生懸命生きているのだ。今まで知らなかった世界のひとりひとりの人生が、源さんの心に沁みてゆく。すべて飲み込んでいる番頭の捨吉(でんでん)が、普通なのにとっても魅力的。
しかし、隠棲しているストリッパーがたっての要望に応えて登板するところでは「……」。髪ボサボサの太ったヤマンバ・オバサンが、いくら舞台衣装を着けて化粧したからといって、あんなにきれいになるなんて。漫画ならアリだろうが…。
1話のエピソードが短く、1回が2話になっていたりするが、それはそれでまた、淡泊な短さが俳句にも似た余韻を残す。「こんな日が来るとは思わなかった」源さんの幸せがずっと続きますように、としみじみ願ってしまう。
寡黙な源さんのセリフは少ないが、1人称のナレーションも遠藤憲一だ。迫力ある殺し屋、実直な中年男、深く渋い声のナレーションと、遠藤憲一の魅力全開ですね。
なかなか全部は見られず、見落とした回も多い。録画予約すると、なぜか前後の番組も同一コードになっていて1時間半も録れてしまうのがちょっと不満。<テレビウォッチ>
カモノ・ハシ