「念願のマイホームがやっと実現」と喜んでいた矢先、工事途中で住宅会社が破たん。払った前払い代金は返ってこず、残ったのは住宅ローンの支払い―こうしたトラブルが今、多発しているという。
番組が、『そして、ローンだけが残った』と、無残に砕かれたマイホームの夢を取り上げた。
住宅会社破たんし、借金2600万だけが
新築着工件数が落ち込むなか、住宅会社の破たん件数が昨2008年388件と、ここ10年で最多を記録した。その多くが、建築主がライフスタイルに合わせて自由に家をつくれる注文住宅メーカー。
今年に入って、資金繰りの悪化で破たんした『富士ハウス』(静岡県浜松市)と『アーバンエステート』(埼玉県川口市)もその1つだ。
被害者は2社で2500人、被害額は70億円以上とみられている。何故これほど被害が膨れ上がったのか?
メーカーの規模が比較的大きかったせいもあるが、番組が指摘したのは、注文住宅の商慣習を悪用した代金前払い方法。
もともと住宅建築は完成までに少なくとも2~3か月はかかる。
住宅メーカーにとってその間、材料の仕入れ、人件費の支払い等が生じ、長い間、着工時、中間時、引き渡し時と代金の分割前払いが商慣習化してきた。
しかし、番組が取り上げたこの2社は、この商慣習を悪用、安くするからと建築代金のほとんどを着工前に前払いさせ、運転資金に充てていたという。
千葉県に住む男性は子供のためにと一戸建ての家を建てる決心をし、選んだのがアーバンエステートだった。
同社の営業マンから「前払いすれば5%値引きすると言われ、親戚から借金し建築費1700万円の8割を超える1400万円を支払った。
不運にもアーバンエステートが破たんしたのは、地鎮祭の日。男性に残ったのは更地と土地代を含めた2600万円という多額の借金だった。
一方、「資金繰り悪化を知っていてローンを組んだ金融機関にも責任がある」という声も高まっている。
富士ハウスに建築費2300万円全額を前払いで支払った奈良県に住む夫婦は、破たん直前に多額の住宅ローンを組んだ金融機関に憤りを感じている。
取材したNHK静岡放送局の藤本一成記者によると、富士ハウスが破たんする3か月前には、運転資金を融資してきた金融機関や取引業者らは資金繰り悪化を知っていたという。
「そのころ富士ハウスから、金融機関に返済の延期を求めたり、取引業者にも代金の支払延期を求める書類が送られていた。
ところが金融機関の中には、それ以降も被害者との間で住宅ローン契約を結ぶところがあった」(藤本記者)
富士ハウスの被害者については、救済のための弁護団が結成され、会社に対し損害賠償と合わせて、金融機関にも責任を問い住宅ローン・ゼロを求めている。