配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
<レイン・フォール/雨の牙>東京を舞台に1人の日系アメリカ人の殺し屋が国家の陰謀に巻き込まれ、CIAから追われるはめになるサスペンス。椎名桔平、長谷川京子の他、名優ゲイリー・オールドマンも出演する。監督は『トウキョウソナタ』の脚本を手掛けたオーストラリア人のマックス・マニックス。スタッフにも多くの外国人が携わっているが、これはれっきとした日本映画だ。
あらすじを見ると緊迫感のあるストーリーに惹かれ、日英を代表する俳優同士の共演となればイヤでも期待は膨らんでしまう。また外国人から見た『トウキョウ』ではなく、きちんと『東京』の街が描かれているのかも気になるところ。
しかし、見終わると妙な脱力感しか残らない。サスペンスなのにゆる~く、実にあっけなく話は進んでいく。ジョン・レイン(椎名桔平)は敏腕な殺し屋で、凄い経歴の持ち主だと言われてもイマイチ説得力がないし、そもそもそのことは劇中で説明のみに終わる。そんな程度で見慣れた顔の俳優を敏腕暗殺者だと思えと言われても無理な話である。おまけに住まいは隠れ家とするボロアパートの一室。部屋には寝床しかなく、生活するにも暗殺稼業を営むにもリアリティに欠ける。
追う者、追われる者同士がいよいよ顔を合わせたとき、その緊張感は最高潮に達し、これぞサスペンスの醍醐味といえるが、この映画では残念ながらあまり味わうことができない。というのもイタチごっこの末、ようやくジョンとCIAの本部長(ゲイリー・オールドマン)が一室で対峙するも、ジョンが追い詰められたのではなく、ジョン自ら本部へ出向いて来てしまう。それどころか本部長の携帯番号までいつのまにか入手して。今までの流れは何だったのか。もうこの時点で新たな真実が明らかになろうと、別に驚きはしない……。少なくとも衝撃度は少ない。
いや、もしかしたらリアリティの欠如や人物・物語の設定不足は、監督が長谷川京子を綺麗に撮ることだけに神経を注いだからかも知れない。それぐらいこだわって撮ったかのように長谷川京子は美しくスクリーンに映える(もともと美しいが)。私なりにこの映画の見所を決めるとするならば、監督が惚れ込んで撮った長谷川京子と(勝手な想像)、都心のちょっと荒んだ居酒屋通りを駆け抜けるゲイリー・オールドマンだ。
ジャナ専 巴麻衣
オススメ度:☆