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<グラン・トリノ>妻に先立たれた朝鮮戦争の帰還兵ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)は、その頑固で偏屈な性格から家族にも敬遠され、アジア人街となった通りで孤独な隠居生活を送っていた。ある日、そんな彼が大事にしている愛車グラン・トリノを隣家に住むモン族の少年タオ(ビー・バン)が盗みに入るが、それをきっかけにウォルトとタオ一家との交流が始まっていく。
朝鮮戦争の過酷な過去に苦しめられ家族にも煙たがられる老人と、内気で早くに父親を亡くした少年は、互いの足りないものを補い合うように親しくなっていく。その過程は軽妙で、ウォルトがタオに大工仕事やかっこいい男の生き方を教えたり、パーティーに招待されたウォルトが異なる文化に戸惑ったりする様は、ゆっくりとした雰囲気と暖かい眼差しで綴られていく。
80歳目前になったクリント・イーストウッドの演技ともおぼつかないよたよたの動きが、この上ないリアリティをもたらし、怒ったときに出る唸り声や、気に入らないときにつばをはき捨てる癖などが、古いアメリカ人の威厳と哀愁を漂わせる。そして、ウォルトの愛車グラン・トリノの重厚でよく整備された車体は、車をよく知らない人も惹きつける美しさを持っている。それは孤高の老人と、古きよき時代のアメリカの誇りともいえる。
悪漢たちに苦しめられるタオ一家のために立ち上がるウォルトは、昔ながらの西部劇を想起させる。しかし、ウォルトは無敵のガンマンではなく、元軍人とはいえ己の死期を悟った老人である。彼が取った方法は哀しくも潔い。ウォルトとタオ一家の交流の末に起こる事件とその顛末は、悲劇的でありながらも優しさを感じる。見終わった後の何とも言えない心地よさは、この映画の秀逸さを物語っている。
ジャナ専 ぷー
オススメ度:☆☆☆☆