少資源国・日本は実は、世界第3位の地熱資源国だ。地熱資源は、太陽光や風力と並ぶCO2 排出がほとんどない再生可能なクリーンエネルギー。現在、アメリカやインドネシアでは大規模な地熱発電所の建設に全力を挙げている。
10年以上新規開発ゼロ
ところが、地熱資源国である日本は、この資源を地下に寝かせたままで、10年以上も新規開発ゼロの「情けない状態」(地熱研究者)という。
番組はアメリカやインドネシアで勢いを増す地熱発電所建設と開発を置き去りにした日本の現状を探った。
日本で今すぐ開発可能な場所に地熱発電所を建設するとすれば1300万キロワット、原子力発電所13基分の電力を取り出すことが可能という。
しかし、現在稼働している地熱発電所は九州東北を中心に18か所。いずれも20年以上も前に開発されものばかり。
当時は世界トップレベルだった技術も、今や継承すら難しくなっているのが現状という。
キャスターの国谷裕子が「CO2と地球温暖化は繋がらないと言っていたのに、その裏で開発を進めていたんですね~」と驚く、世界第1位の地熱資源国・アメリカはどうか。
昨年10月に米政府は、地熱開発の有望な政府の土地を民間に貸出し、地熱開発を推し進めると発表した。その面積は日本の国土の2倍。成功すれば発電量は現在の5倍に伸ばせるという。
現在ネバダ州を中心に121件の地熱発電開発プロジェクトが進行中で、完成すれば10万人の雇用創設にもつながるという。
開発に携わる事業者や投資家が集まって先(3)月、サンフランシスコで会合が開かれた。その中で投資家として参加したIT企業の『グーグル』担当者が次のように述べて注目された。
「地熱発電は、発電量をさらに伸ばすことができるビジネスチャンスと見ています。より深い所から地熱を取り出す新技術にすでに10億円を投資しました」
初期投資がかかる
一方、地熱資源国・世界第2位のインドネシアでは、経済発展で急増するエネルギー需要に対処するため、地熱発電所の建設に取り組んできた。現在23万キロワットの発電を行っており、3年後には40万キロワットに増やす計画という。
日本は、ただ地下に寝かせておくだけなのか。事業化の経済性に関するある調査によると、予想以上のコストがかかり、一企業が取り組むのは難しい。
国谷の「クリーンエネルギーは初期投資が高くつくんですね?」に、番組に生出演した千葉大の倉阪秀史教授は次のような開発を拒む理由を……
「資源が地下にあり、まず調査で費用がかかる。そのうえ設備が大型、場所が山の中なので送電線を引く費用もかかる。運転費用は安いんですが、初期投資がかかる」
国谷がさらに「アメリカの徹底した戦略に圧倒される思いですが、日本は何故出遅れたのですか。国の姿勢としてはどう取り組めば?」と。
倉持は「電力自由化という発電コストを避ける政策に行ってしまい、コストの高い再生エネルギーは取り残された。国全体の戦略形成がされて来なかった」と指摘。
さらに、国の姿勢については「経産省が最近になってようやく検討会を始めたばかりで、まだ結論は出ていません。民間の投資を引き出させるような施策、例えば投資回収年数を短くしそれを保証する政策が必要です」という。
中途半端な構造改革に悦に入って、国の基本である資源確保で長期戦略を練り、具体化するリーダーがいなかったということか……
モンブラン
<メモ:地熱発電>
地下のマグマによって熱せられた蒸気が地下から噴出する、この熱エネルギーを利用してタービンを回して発電し、冷やされた蒸気を再び地下に戻す。再生可能な資源利用だ。
*NHKクローズアップ現代(2009年4月15日放送)