「農業」数日でやめた元派遣 甘くない現実と甘い発想

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   100年に一度級の不況の影響で、国内でも派遣切りをはじめとして、数十万人規模の失業者が発生している。それでも、まったく求人、働き場所がないわけではない。とくに作業者の高齢化や後継者不足、休耕地問題に悩む地方では、自治体もあの手この手で人を集めて、「雇用の受け皿」になろうと目論んでいる。

   そんなこんなで、いまは空前の就農(を検討する)ブームなんだそうだ。就農説明会などに足を運ぶ人が増え、農業への関心はたしかに高まってると見られる。だがしかし、実際に就農し、続けるとなると、なかなかむずかしい――。そんな実態を報告したのが今回の放送「『派遣切り』農業を目指す」だ。

高付加価値作物に注目

   ある農家は、派遣切りにあった人を4人採用したが、全員が数日で辞めてしまったという。「なにしに来たんやという感じの子が何人もいた。やっとられんわという感じにはなりますね」(社長)

   そこで実際に辞めた人に話を聞いてみると、想像以上に大変だったということらしい。雪が降る、凍えるような寒さのなかでの農作業。ぬかるみに足を取られるわ、以前の工場労働とは違い、時間がハッキリと決まってない、いつ終わるとも分からない。なんだかよく分からないことをやらされるストレス。慣れない仕事は体力的にもきつい。

   本日のスタジオゲストで、テレビでも度々見かける金子勝・慶応大学経済学部教授(農業経済に注目して全国の農村を回っているそうだ)は「(人を)部品のパーツのようにあっちからこっちへ移す」というミスマッチ論的発想の非人間性を指摘する。

   その一方で、就農する側もきちんとした農業への理解がなく、漠然と「牧歌的」なイメージを抱いて就農してしまったりしているのも問題だという。「そんなに甘くない」(金子)のである。農業に特有の能力があるし、時間の流れも違う。頭も使わなければいけない――。

   で、成功している就農例を見ると、やはり付加価値の高い作物をつくっているところが多いそうだ。収入が比較的多く見込め、先の展望が明るそうなところに(優秀な)人材が集まる。結局、農業といっても、基本的な雇用の構造に特別なところはなく、他の業種と変わらなそうなのであった。

ボンド柳生

   * NHKクローズアップ現代(2009年4月7日放送)

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