「インサイト」好調と「籠城戦」 日本自動車産業の活路とは

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

   国谷裕子キャスターが、ほぼ1か月ぶりに登場した。再スタート第1夜は「生き残れ 日本製造業」シリーズの1回目「自動車」。新発売したハイブリッド車「インサイト」が売れ行き好調のホンダに密着した前半と、自動車の一大生産拠点と化した九州北部にある部品メーカーの生き残り策を伝える後半の2部構成だが、見所は圧倒的に前半。

   収益の半分を稼いでいたアメリカで自動車バブルが崩壊し、販売が激減したホンダは、創業以来の危機的状況に直面する。事態打開のために、福井威夫社長自らが下した2つの重大な判断を述懐する場面が出てくる。

社長が難問つきつける

   先ずホンダの象徴ともいえるF1 からの撤退。「身内から痛みを感じることにした。簡単ではなかったが、企業としてそれ以外に乗り越える方法がなかった」と福井は言う。ホンダは、苦渋の決断で生み出した年間500億円の資金や人材を「インサイト」の開発に投入する。ここで福井はスタッフに難問をつきつける。消費者の関心を呼ぶように「インサイト」の価格を200万円以下に抑えろ、というのだ。「社長が、売価とかコストの数値目標を言ったことは今までにないだろう。言った以上やらなきゃならない。ものすごいプレッシャーだったと思う」と福井は述べる。

   スタジオゲストの藤本隆宏(東京大学ものづくり経営研究センター教授)は「無理難題を上から言われる設計屋は大変だ」と笑う。そして「日本はチームワーク、大部屋設計という形で、みんなで複雑な連立方程式を解くようなつくり方が得意だ。厳しい制約条件の中で安いものをつくらなければならない環境対応車は日本の得意技にぴったり合う。そこに日本の産業の活路がある」と話す。

   課題をクリアした「インサイト」は発売1か月半で受注2万台を超すヒットとなった。

「よい現場」残せば飛躍できる

   後半で紹介される部品メーカーの生き残り策と技術についても、藤本は信頼を寄せる。九州北部は、自動車バブル当時よく売れた高級車生産の中心だったという。それだけに部品メーカーの苦境はより厳しく、懸命に生き残りを模索している現状だ。

   「どんなに厳しくても現場を鍛えることをやめない。現場を鍛えると人が余るが、余った人を、忙しいときにはできなかった教育、改善に回す。そういう『籠城戦』をやって、よい現場を残せれば、生き残れて次に飛躍できると信じている」と藤本は評価する。さらに「高級車で使った製品をエコに移して行こうとしている。むずかしい設計という点では同じで、スムーズに行ける」と見る。

   やはり、よい現場と、それを牽引する存在が噛み合って始めて生き残りが可能、という結論に落ち着きそうである。

   久方ぶりの国谷に活気が見えたのは、休養を取ったためばかりでなく、ゲストの藤本が1度も手元の原稿に目を落とさずにコメントしたことも一因だったのではあるまいか。

アレマ

*NHKクローズアップ現代(2009年3月30日放送)

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