<テレビウォッチ> スタジオに黒い布で覆われた物体。笠井信輔が布をはずすと、ケンタッキー・フライドチキン(KFC)のシンボル、カーネル・サンダースが現れた。笠井が「85年に道頓堀川に放り込まれた彼がいま現れたのは偶然か、必然か」
「とくダネ・プレミアム」という新しいコーナー。出来事の裏をいろいろ考えようというもののようだ。その第1回が「彼」というわけ。むろん、スタジオのはピカピカ、身長176センチ、重さ20キロ。いつもの笑顔。
24年ぶりにヘドロの中から引き上げられた「彼」は、「ボロボロでしたが、笑顔はそのままでした」とレポートの山本麻祐子。優勝した阪神の大黒柱、ランディ・バースに似ているというので、近くのKFCの店先からかつぎだされ、放り込まれたのだった。
そのご何度か、『捜索』が行われたが見つからず。2002年にテレビがやったときには、57台もの自転車が引き上げられたが、「彼」はいぜん不明。それが今(3)月10日、工事関係者がみつけたのだ。KFCは、「いま現れたのは、何かメッセージを伝えているのでは?」という。
番組はこれにかけたらしい。タイトルも「私が今出てきた理由」。ところが小倉智昭は、これが戦略なのか「コーナーの初めにいうのもなんだけど、偶然でしょうよ」と水を差す。しかし山本はめげない。あの日、川に飛び込んだ人、ビルのオーナーの女性などメッセージをきき出そうと歩く。
カメラはとうとう、いまはオクラホマ州議会上院議員になっているバース本人にまでたどりつく。じっと「彼」の写真を見入ったバースは、「信じられない。ボクのことを知ったら驚くだろう。議員になってこんなところにいるんだから。お前のせいで投げ込まれたというかも」
実は放り込まれた瞬間は、どのテレビにも写っていない。胴上げされているスチル写真が1枚あるだけだ。その中で胴上げしているようにみえる1人は、 KFCの当時19歳のアルバイト店員だった。これを新聞記事から探し出した。
店はすでになく、彼も不動産業に転職していた。「店のシンボルだから、取り返そうとしていた。それが胴上げといわれた」。KFCには20年近く関わったが、「サンダースの精神には励まされてきた」と、手帳に貼っている彼の言葉を示した。「困難にも、地に足をつけ、避けて通らず、じっくり取り組んでいけば、やがて道は開ける」とあった。
いま「彼」があらわれたのは、ただの偶然?それとも必然?それを決めるのはあなた自身かもしれない、というこじつけにはスタジオも笑っちゃった。
小倉はあくまでドライに、「呪いがなくなって、今年阪神が勝てないと理由がなくなっちゃう」(笑い)「竹田さん、バースのところまで、いっちゃいました」
竹田圭吾は、「活躍よりも、バースはお子さんの病気のために試合を休んだりして、その家族への愛情を思い出しました」。そうだった。阪神の経営陣がそれを理解できずに、かれは日本を去ることになった。
山本によると、引き上げられた像は修復して、どこかに飾られるのだそうだ。