3.24小沢一郎の去就は? 代表辞任・議員辞職・居座り…

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   3月18日夜、阿佐ヶ谷の「ロフトA」で月1回開いている、優れたドキュメンタリーを見る会で、MBC(南日本放送)の山縣由美子ディレクターが制作した「やねだん」を見た。

   鹿児島県鹿屋市の柳谷集落、愛称「やねだん」は人口300人、そのうち65歳以上が4割を超える、いわゆる「限界集落」だった。ところが、優れたリーダーの下、「行政に頼らない地域再生」で、老若男女全員が労力や技術を提供しあい、独自の商品開発で自主財源を増やし、福祉や教育を自ら充実させ、集落の全員にボーナスまで配っているのだ。しかも、全国から移住してくる若い人も多く、人口が増えている、全国から大注目の「地域再生」に成功している集落なのだ。年寄りたちの表情がとても明るくて可愛い。

感動ドキュメンタリー「やねだん」

   リーダーの豊重哲郎自治館長がこういう。「交付金などを当てにしていたら感動がなくなる」。村興しなんて他人事だと思っている村人に、「感動を与え、仲間意識を植え付けたら成功したも同然です」

   過労死、薬害訴訟など現代の暗部を抉るドキュメンタリーは数々見てきたが、これほど元気をもらった作品はなかった。

   一緒に行ったアメリカ在住の友人が、とってもおもしろい、これは、アメリカに売れるといった。オバマ政権ができたぐらいしか明るい話題がないアメリカでは、こうした話に飢えているというのだ。

   私も、このドキュメンタリーを見ていて、多くの週刊誌編集者たちに見てもらいと思った。貧困、人減らし、政治・役人不信と、暗く沈みきったこの国に、今一番必要なのは感動なのだ。

   感動する記事を探していたら、朝日のグラビアに、こんな句があった。

   初桜 折しもけふは よき日なり 松尾芭蕉

   これも小さな感動である。

   今週も、挙って「小沢VS検察」の死闘がどうなるかが、各誌のトップに来ている。読み比べてみると、これからの政局が見えてくる。

ポスト小沢は誰なのか

   現代は、小沢ウオッチャー松田賢弥記者が、小沢の「ゼネコン疑獄」の本丸は西松建設ではなく鹿島建設だとして、「小沢は民主党代表の座を辞すればすべてを失うことに繋がりかねないと脅えているのではないか」と、小沢辞任に否定的だが、これは少数意見のようだ。

   ポストは、田中角栄、金丸信と連綿と続いてきた特捜部と小沢の対決は、常に小沢側が敗れてきたが、今回は、その最終戦である。また、5月から始まる「裁判員制度」に対して、政権奪取すれば、見直し、取り調べの全面可視化などを義務づけようとする民主党への反発が、法務・検察側にあり、それが決定的な対立になったのではないかとする。

   3月24日に、公設秘書が起訴されることは間違いないようだが、民主党幹部は、「小沢代表は自分が代表を辞めることで、同じように献金を受けていた二階氏らを大臣辞任に追い込むような、自民党に痛撃を与える引き際を考えていると思う。(中略)総選挙を勝ち抜いて民主党政権ができた後に小沢は隠然たる影響力を残せる」と語る。

   朝日も「3.24自爆テロ辞任」説である。新潮は、小沢周辺の人間模様をワイド風に描き、小沢がどう動くかには触れていないが、文春は、今回の「小沢ショック」が、解散総選挙にどう響くのかを、政治広報センターの宮川隆義社長に分析させている。

   それによれば、どちらにしても自民党劣勢は変わらないが、民主党の単独過半数は不可能と読む。

   注目候補、中川昭一、武部勤、久間章生、古賀誠、二階俊博には落選印がついた。

   では、ポスト小沢は誰なのか。岡田克也副代表がダントツ本命で、菅直人代表代行が対抗、大穴は「ミスター年金」長妻昭というのが、週刊誌筋の見方のようだ。

   私も、3月24日、秘書が起訴されれば、小沢は代表の座を辞すると読むが、一部にあるような、議員辞職はないと思う。なぜなら、田中角栄、金丸信など、議員バッジをはずした後の実力者の哀れを、小沢は身に沁みて知っているからである。

野球人気復活の秘策

   私の好きなコラム、小林信彦氏の「本音を申せば」で、この問題にこう疑義を呈している。「大新聞は戦争中に軍部をホメたたえ、敗戦になったときも、読者である国民にひとことも謝らなかったので有名です。(中略)半藤一利氏が『昭和史』という本に書いていますが、国民を戦争にかり立てたのは新聞です。軍が動く前に、新聞が煽るのです」また、「検察の意図的なリークといい、なにをやってでも、自民党(または自公)内閣を守るという目的から発したものでしょう。新聞記者や検察官僚の、おそらくは、〈勘ちがいの正義感〉からの暴走が、ぼくに〈いやな感じ〉を抱かせるのですが、これは戦時中からの体験です」。小沢代表への潜在的な支持者は、意外に多いのかもしれない。

   さて、新潮の早川編集長が4月半ばで交代する。8年近いのだから、代わっても何ら不思議はないのだが、朝日新聞阪神支局襲撃犯の告白騒動の後だから、何かと喧しい。だが、私もだいぶ前に本人から聞いていたが、そうしたこととは関係ない異動である。しかし、願わくば、朝日新聞から上記の件で「質問状」が出されたようだが、きっちり白黒をつけて、後任にバトンタッチしてもらいたい。

   最後に、今週のお奨め。文春では、少し前から創刊50周年企画をやっているが、今週の「2000人大アンケート 心に残る50年の『流行語大賞』」がおもしろい。創刊時、昭和34年(1959年)の流行語は、清宮貴子内親王が結婚相手について語った「私の選んだ人を見ていただきます」から、「シェー」(65年)、「ウーマン・リブ」(70年)、「中ピ連」(74年)、「ぶりっこ」(81年)など、時代を思い起こさせる言葉が並んでいる。その中で栄えある第1位は、長嶋茂雄が現役引退したときの「巨人軍は永遠に不滅です」(74年)。2位にも「巨人、大鵬、卵焼き」(61年)と、巨人がらみの流行語が入っている。

   親子二代の由緒正しい巨人ファンの私としてはとても嬉しい。巨人が弱くなったことで野球人気も衰退してきたが、日本人は野球が好きなのだ。WBCのあの熱狂ぶりは、往時を彷彿させるものがある。野球人気を復活させる秘策は、韓国、台湾、中国とアジアリーグを作り、そこの勝者と、大リーグの勝者との「世界選手権」開催しかないと思う。


元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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