滝田洋二郎監督の「おくりびと」が米アカデミー賞の外国語映画賞を受賞し、テレビで何度も取り上げられていた。邦画初ということで素晴らしい快挙だ。主役の本木雅弘が演じた、遺体をひつぎに納める納棺師になりたいという人が急増した、という気の早いニュースも流れていた。
本木が原作本を読んでから10年以上も温めて映画化を実現させた、という気合いの入った作品だ。映画を観たときは、日本人の死者への細やかな心情がうまく描かれているなと思った。良い映画なんだけど、今回よく外国の人に理解できたな、とも思った。
TBSが金を出した作品。配給は、最初話がいった東宝が地味すぎる、と断ったそうで松竹に回った。TBSと松竹はウハウハだろう。TBSは、4月に放送する米マスターズに石川遼が出場するという「順風」を受けている。今回の受賞も思わぬ「風」だろうが、こうした風はしっかりつかむ必要がある。
滝田監督はピンク映画出身。「笑い」を大切にする人で、「木村家の人々」や「病院へ行こう」などはとても笑わせてもらった。出世作となった1986年の「コミック雑誌なんかいらない!」は、内田裕也が梨元勝みたいな芸能レポーターに扮し主役を務めた。松田聖子と神田正輝の結婚式など実際のエピソードを交えたハチャメチャな映画だった。私は当時、フジテレビでプロデューサーをやってたころだけど、この映画にプロデューサー役で出演したという思い出もある。内田裕也とは仲良しで、私の出がけに彼がふらりと自宅に来て、私が仕事へ出た後もカミさんとコーヒー飲みながら2時間おしゃべりしてた、なんてこともあった。映画の出演料としてその場で5万円もらったが、カンパします、とサインして置いて来た。
その頃の滝田監督はまだ30ちょっとぐらいの歳だったのかな、はっきりしてる人で、お笑い志向が強いな、と頼もしく感じて応援していた。アカデミーを受賞した今となっては、黒澤明か滝田か、と言われるようになるのだろうか。
出演陣はとにかく本木のモックンが頑張った。妻役の広末涼子が思いの外良い演技を見せてくれた。これは本格カムバックだね。本木の師匠役で、私の飲み友達でもある山崎努もいい演技だった。もっとも本人は手紙で、この映画のどこが面白いのか分からない、なんて書いてたけど。出演していた峰岸徹さんと、本木の所属事務所の社長で製作に力を注いだ小口社長の2人は既に亡くなっている。天国から喜んでくれているんじゃないだろうか。
シブがきも 今は立派な 大人びと